パラメトリック型ソリューション 10の誤解

パラメトリック型またはインデックス型ソリューションについて、色々な誤解を耳にする機会が頻繁にあります。本回は、パラメトリック型ソリューションに関する「よくある10の誤解」を取り上げ、わかりやすく解説したいと思います。

※本記事は「パラメトリック型ソリューション」の仕組みについて説明するものであり、保険商品としての取り扱いは各国の規制により異なります。

前回の記事『パラメトリック型ソリューションとは?』では、パラメトリック型ソリューションの主な特徴、仕組み、従来型保険との相違点など、基本事項について説明しました。

しかしながら、パラメトリック型またはインデックス型ソリューションについて、色々な誤解を耳にする機会が頻繁にあります。本回は、パラメトリック型ソリューションに関する「よくある10の誤解」を取り上げ、わかりやすく解説したいと思います。
 
誤解1:パラメトリック型ソリューションは従来の実損てん補型保険に比べ 常に高い
パラメトリック型ソリューションのコストやレート・オン・リミット(支払限度額に対する料率)に対する懸念をよくお聞きします。

実際にはパラメトリック型と従来の実損てん補型は補償対象が異なるため、同一基準で比較をすることはできません。パラメトリック型ソリューションは、実損てん補型保険で対応が困難な補償のギャップ(免責金額、引受対象外のリスク、キャパシティー不足)や、偶発的な事業中断や広範囲に及ぶ損害への対応を可能としています。

パラメトリック型ソリューションは、あらかじめ設定したイベント(例えば、カテゴリー5のハリケーン、マグニチュード7の地震など)の発生確率のみに基づいて設計されます。保有する資産から切り離されるため、対象とする資産の脆弱性は考慮されません。非常に単純化して申しますと、地震が100年に一度の確率で発生する場合、レート・オン・リミットは、対象とする資産にかかわらず1%になります

こうした背景から、適切なソリューションを組成するには、必要な補償内容を妥協することなく、適正価格を維持するトリガー設定や支払い条件の設定が求められます。段階的に支払うパターンや複数のトリガーを設定してパラメトリック型ソリューションをカスタマイズする手法もあります。

パラメトリック型ソリューションは従来の保険に取って代わる存在ではなく、純粋な経済的損失や従来の保険では引受できないリスクに対応する、従来型保険を補完するものであることを心に留めておくことが重要です。

誤解2:パラメトリック型ソリューションは複雑で理解しにくい
実際はその逆です。パラメトリック型ソリューションは、従来の保険より単純明快に設計されています。あらかじめ定義されたイベントの発生、またはインデックス(指標値)の設定条件を満たした場合に、契約が発動し、事前合意された金額が迅速に支払われます。

設計に複雑さを感じる方がいらっしゃるかもしれません。多くの場合、設計時には何度も検証を重ねますが、このプロセスはベーシス・リスクを低減し、お客様独自のニーズに合わせた商品へとカスタマイズする上で重要な役割を果たしています。パラメトリック型ソリューションには細則だらけの約款は不要です。

対象資産の脆弱性を考慮しないため、引受および保険金支払いプロセスは従来の保険商品よりはるかに単純です。現地調査、リスク診断、事故発生後の保険金請求手続きなどのプロセスから完全に解放されます。

誤解3:パラメトリック型ソリューションは従来の保険に取って代わる存在である
実体としては、パラメトリック型ソリューションは、従来の保険プログラムの代替品ではなく、補完するものとして設計されています。一般に、従来の保険プログラムでは補償できないギャップや免責部分を埋める役割を果たしています。

パラメトリック型ソリューションは、その基本的な特徴から、物的損害を伴わない純粋な経済的損失を補償するうえで理想的な商品と言えます。物的損害を伴わない例として、台風の接近に伴う集客力の低下や、第三者の敷地内で発生した洪水によるサプライチェーンの事業中断などが該当します。

  従来型の保険 パラメトリック型ソリューション
支払いトリガー 物的損害 パラメーターの設定条件(指標値)を上回るイベントの発生
支払い基準 実際に被った損害額の補填

事前に合意された金額

ベーシス・リスク 保険約款、免責条項、不担保条項 モデルの精度、支払いトリガーとしての指標値と基礎となるロス・エクスポージャーとの相関関係
請求プロセス 複雑:損害査定人による査定が基本となり手続きに時間がかかりやすい 明確:指標値に基づくため、迅速な処理
期間 通常は1年、時に複数年契約 1年または複数年契約

構成

標準的な商品と約款構成、一部カスタマイズ可能 非常に柔軟な構成でカスタマイズされた商品展開(単一トリガー設定、複数トリガー設定など)

契約形態

保険契約 保険またはデリバティブ

出典:スイス・リー・インスティテュート

誤解4:パラメトリック型ソリューションは保険契約ではなく、会計処理が複雑になる可能性がある
一般に、パラメトリック型ソリューションは、お客様の好みやニーズに合わせて、保険契約またはデリバティブとして取引されます。また、当該国の規制および法的枠組みの影響を受けます。主な相違点として保険契約では一般に「被保険利益」と「損害証明」が必須です。保険契約として取引される場合、パラメトリック型保険は他の保険契約と同一の会計原則および会計基準に則って処理されます。

単純化すると、次の2種類があります。
-    お客様が被る経済的損失にかかわらず、あらかじめ定義したイベントが発生した場合に約定した金額を支払うシンプルなパラメトリック補償。通常はデリバティブとして取引されます。
-    保険契約を適用して支払いを行うためにパラメトリック(事前に設定したイベントパラメーター)と補償条件(損害の証明)の両方が必要になる「ハイブリッド」型補償。この種の補償は保険契約として扱われます。

誤解5:パラメトリック型保険はギャンブルのようなもの
この誤解は誤解4とある程度関連しています。保険とギャンブルの根本的な違いはエクスポージャー、すなわち被保険利益の有無にあります。
厳密に言えばデリバティブとして取引するパラメトリック型ソリューションはプラスに働くベーシス・リスク(経済的損失を被らなくても支払われる)を伴う場合があります。しかし、パラメトリック型ソリューションの大半は、補償条件に損害の証明を必要とする保険契約でのリスク移転手法になっています。

いずれの取引においても当社はパラメトリック型ソリューションをリスク移転商品と認識しています。

誤解6:パラメトリック型ソリューションが適しているのは大企業だけ
インデックス型ソリューションは多様な規模および仕様で提供されています。特定のニーズ(その多くは大企業)に合わせて個別に設計する商品がある一方で、オンラインでマウスを数回クリックするだけで申し込める高度に標準化された商品も用意されています。

とりわけ「Cat-in-a-box」やスイス・リーの「Insur8」は、中小企業用により標準化したもので、上限額を抑えて標準化することで経済性の高い保険商品となっています。

誤解7:パラメトリック型ソリューションの補償範囲は財物損害に限定される
実際はその逆です。

パラメトリック型ソリューションは特定の物的資産や財物を補償するのではなく、あらかじめ定義したイベントの発生のみを条件として適用されます。そのため、物的損害のない純粋な経済的損失や契約者の管理下にない資産の損失の結果発生する損害に対して極めて有効な選択肢となります。

例えば、電車や飛行機の遅延、国境を越える霧に伴う集客力の低下、悪天候によるプロジェクトの遅延などがパラメトリック型ソリューションの対象になります。 
    
誤解8:パラメトリック型ソリューションは保険をかけられないあらゆるリスクまで補償できる
確かにパラメトリック型ソリューションは補償範囲を広げますが、あらゆるリスクに効く万能薬ではありません。偶発性があり、モデリング可能で、かつ被保険者の経済的損失と相関関係があるトリガーを設定することが、常に基本要件となります。そのため、従来の保険プログラムを補完して一定の補償ギャップは埋められますが、すべてのリスクに対応できるわけではありません。

例えば、企業業績の変動に晒されるリスクや商品開発リスクなどの純粋な事業リスクは保険へのリスク移転が難しく、従来どおり株主が負担することになります。

誤解9:パラメトリック型ソリューションは自然災害イベントのみに適用される
自然災害イベントはパラメトリック型ソリューションの分野で広く採用されるトリガーではありますが、他にも多くのトリガーや適用事例がインデックス型補償には存在しています。

理論上、偶発的な要素またはボラティリティーを有するインデックス(指標値)であればトリガーとなり得ます。自然災害イベント(または天候一般)は、偶発性要件を明確に満たす上に財務業績にも影響を及ぼす場合が多いため、パラメトリック型ソリューションを組成する際に非常に理解しやすいトリガーであるに過ぎません。

気温、日照、風速、降水量などの一般的な気候トリガーに加えて、当社は各国の規制判断、集客力の低下、パンデミック(感染爆発)、発電所の供給停止リスクなど天候関連以外のトリガーも幅広く取り扱っています。

誤解10:パラメトリック型保険には常に大きなベーシス・リスクがある
一般にパラメトリック型保険はベーシス・リスクを伴いますが、ベーシス・リスクはあらゆる保険商品に内在しています。従来の実損てん補型保険の場合、ベーシス・リスクは免責金額、サブリミット、免責条項などの形で含まれています。そのため、保険契約者が期待する補償額と保険契約に基づき実際に支払われる保険金との間に乖離が生じる場合があります。パラメトリック型ソリューションの場合は、インデックス(指標値)と基礎となるリスク・エクスポージャーの相関関係からベーシス・リスクが生まれます。簡単にいうと、それは被保険者の損失額とパラメトリック型ソリューションからの支払額との差異です。

ベーシス・リスクはパラメトリック型ソリューションの特性であり、低減することはできても完全に排除することできません。

パラメトリック型保険のスキームをより精緻に設計することで、こうしたベーシス・リスクを低減し、約定支払額をできる限り実際の損失額に近づけることができます。インデックス(指標値)を精密化し、支払い条件を最適化することが一般的な手法となります。

参考資料
シグマ調査レポートによると、昨年度は損失額が史上最高となりました。下記の資料では、パラメトリック・ソリューションで企業がレジリエンス注1とリスク移転を実現するための方法を説明しています。詳細については、当社の最新資料をダウンロードしてご確認ください。

第1回記事『パラメトリック型ソリューションとは?』

Disaster Solutions for Corporates in APAC(アジア太平洋地域の企業向け災害ソリューション)』をダウンロードする

注1:全体としての機能を速やかに回復できるしなやかな強靭さ

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