パラメトリック型ソリューションがかつてなく求められている3つの理由

※本記事は「パラメトリック型ソリューション」の仕組みについて説明するものであり、保険商品としての取り扱いは各国の規制により異なります。

最初の大規模なパラメトリック型ソリューションの一つはParametric Reでした。これは1997年、スイス・リーが東京海上火災保険に対して組成した取引です。しかし、パラメトリック型の保険商品は20年以上の歴史があるにもかかわらず、実際に普及したのはここ5年の間にすぎません。

それでは、なぜパラメトリック型ソリューションに注目し始める企業が増えているのでしょうか?今日のビジネスにおいてパラメトリック型ソリューションの優先順位が上昇していることには、以下に述べる3つの理由があります。

1) 気候変動によって異常気象の頻度と深刻度が高まっている

パラメトリック型ソリューションは、気象イベントだけを対象とするものではないものの、自然災害に備えるものとして多く活用されています。自然災害は、たとえ適切な事業継続計画(BCP)を導入していたとしても、リスク管理と保険の観点から課題となるものです。

近年、自然災害の頻度と深刻度は高まっています。このことは昨年のアジア地域を振り返るだけでも明らかです。フィリピンと香港は超大型の台風マンクット(2018年台風第22号)により壊滅的な打撃を受け、日本では地震(大阪府北部地震、北海道胆振東部地震)、災害級の猛暑、西日本豪雨、台風チェービー(2018年台風第21号)に見舞われました。

自然現象がますます予測不可能となる中、気候変動により異常気象の発生リスクやそれにより影響を受ける可能性が増大していることは広く知られており、メディアの注目度も過去にないほど高く、自然災害に対する保険の需要は空前の域に達しています。スイス・リーの発行するシグマレポートによれば、2017年にアジアで発生した自然災害による経済的損失額は推定310億米ドルに上るものの、そのうち保険でカバーされた額は50億米ドルにとどまり、明らかに補償に大きなギャップがあることがわかります。先進的な企業は、新たな視点から保険による補償範囲を見直し始めています。このような企業は、既存の従来型保険プログラムのギャップを埋め、補完する方法を求めています。自然災害は広範囲に影響を及ぼし、物的損害を伴わない事業中断(Non Damage BI)によっても大きな損失をもたらす可能性があるため、パラメトリック型ソリューションを活用することは理にかなっています。

気候変動は地球温暖化につながるとともに、異常気象にも影響を与える可能性があります。パラメトリック型ソリューションでは、事前に定めたインデックス(指標値)の測定をもって迅速な支払いを行うカスタマイズされた透明性の高い補償条件によって、企業は異常気象の増加が懸念される中でも安心を得ることができます。

こうした透明性は、どのように実現されているのでしょうか?この点を次のポイントで見ていきます。

2) データ収集の改善により、かつては保険を提供できないとみなされていたリスクのモデリングが可能となってきた

歴史上初めて海上保険契約としてリスク移転スキームを確立した中世イタリアの商人は、自分たちの先駆的なリスクヘッジ手法が いつの日かパラメトリック型ソリューションのような補償形態として現れてくるとは想像すらしなかったことと思います。それは当然のことで、パラメトリック型ソリューションを組成するために必要な基礎が、その当時はまったく存在していなかったのです。基礎とは、すなわちデータです。

最初の記事でご説明したとおり、パラメトリック型ソリューションは独立した第三者機関(政府機関の場合が多い)から報告されるデータを必要とします。このような第三者機関は、地震や熱帯低気圧といったイベント(事象)の発生を定量的な方法で客観的に報告します。天空に衛星が、陸・海上に記録用の設備がなくては、こうした作業はまったく不可能でした。

しかし今日では、技術の著しい進歩により、信頼性の高い高密度ネットワークが利用可能となりました。こうしたネットワークは、地球を365日・24時間休まず監視しています。調査や災害時緊急対応計画のために、かつてないほど多くのデータが収集されています。センサー技術の使用によって、データは事故が発生する前からリスクを軽減するのに役立っています。同時に、こうしたネットワークからのデータは、日本の地震からプエルトリコのハリケーンの補償に至るまで、革新的で新しいパラメトリック型ソリューションの組成およびモデル化を可能としました。

3) データの改善は、リスク評価の確実性と価格の透明性が高まることを意味する

現在のデータは品質が高く精細であり、私たちは世界のあらゆる地域で発生する幅広い自然災害に関する理解を深めることができます。このことはすべてのリスクマネージャーにとって朗報と言えるのではないかと思います。なぜなら、結果的にインデックスが洗練され、ベーシス・リスクが低下するからです。

自然災害リスクについて知ることは、堅実な事業継続計画(BCP)の導入だけでなく、保険を購入する際の意思決定にも役立ちます。パラメトリック型ソリューションでは、支払額と補償内容は報告データに左右されます。データのインデックス(指標値)の発生確率は、必然的に保険料に反映されます。パラメトリック型ソリューションは、発生確率など根本的なリスクに基づいて評価されるため、従来型の補償に比べてアンダーライティング・サイクル注1 の予測不能な変動による影響を受けにくくなっています。保険料は特定の事象が発生する可能性に直接関連しており、こうした可能性は一夜で変化するものではありません。

今日では、特に政府機関のデータを始めとして、膨大な過去のデータを誰でも無料で利用することができます。これにより、保険会社は、保険料の設定についてお客様と客観的かつ透明性の高い議論を行うことができます。一方、お客様は、独自にリスク評価を実施し、提案されたパラメトリック型の補償条件を評価することができます。

パラメトリック型ソリューションは、透明性が高く、迅速な支払いが可能であり、他の方法では付保が困難なリスクをカバーできるといった特徴により、従来の保険プログラムを補完するのに最適なものと考えられます。これは中世イタリアにおける初期の単純な保険とは非常に対照的です。当時は船が航海から帰還しなかった場合、激しい嵐によって沈没したのか、あるいは海の怪物に襲われたのかは謎のままでした。

第1回記事『パラメトリック型ソリューションとは?』
第2回記事『パラメトリック型ソリューション 10の誤解』

注1 Underwriting cycle:競争的な保険市場では保険料が低水準となり保険購入が容易となるソフトマーケットの時期と保険料水準が高水準となり保険購入が困難なハードマーケットの時期が循環的に生じることをいいます。例えば、ハリケーンなどの巨大な自然災害が生じて多額の保険金が支払われると保険料率が高騰し、ハードマーケットとなる傾向があります。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズが異常気象に対するパラメトリック型ソリューションをどのように組成しているかについては、最新資料「アジア太平洋地域の企業向け災害ソリューション」で事例をご確認いただけます。

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