ホワイトペーパー:パラメトリック型ソリューション

エアーミック  2018年6月11日

(https://www.airmic.com/)

※本記事は「パラメトリック型ソリューション」の仕組みについて説明するものであり、保険商品としての取り扱いは各国の規制により異なります。

はじめに

ビジネスモデルの崩壊、有形資産から無形資産へのシフト、それらに伴うリスクプロファイルの変化といった背景を踏まえ、リスクマネージャーは現在の世界にふさわしい新たな商品やサービスを求めています。取締役会は、過去には対応が不可能であったリスクに対するソリューションを保険担当者に求めていますが、このような中、パラメトリック型ソリューションの可能性について検討する動きが強まっています。

パラメトリック型ソリューションには、補償の透明性、支払いの迅速性、設計の柔軟性という明白なメリットがあります。しかし、パラメトリック型ソリューションの検討に時間とリソースを投じながら、導入に踏み切れない組織の事例も耳にします。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ、マーシュ、リスクマネージャーのグループとともに作成したこのホワイトペーパーでは、パラメトリック型ソリューションを導入する際に直面する課題と、それを克服する方法を検討しています。

パラメトリック型ソリューション:簡単なおさらい

パラメトリック型ソリューションは、従来型保険のベーシス・リスクを最小限に抑えることにより、補償の透明性を提供することを目指しています。ベーシス・リスクとは、保険契約者が期待する補償額と、契約に基づいて実際に支払われる補償額にミスマッチが生じるリスクを言います。

パラメトリック型ソリューションは、企業が危機に陥ったとき、事業継続と復旧に必要な費用を賄うための流動性資金をほぼ即座に提供します注1。実損てん補型保険のように詳細な損害調査を経る必要はありません。このことは、昨今のビジネスシーンでは極めて重要になっています。企業の借入比率が高い場合、金融機関、投資家およびその他の利害関係者から良い評価を得ることがとても重要だからです。

 

従来型の保険 

パラメトリック型ソリューション 

支払トリガー

物的損害

パラメータの設定条件(指標値)を上回るイベントの発生

支払基準

実際に被った損害額の補填

事前に合意された支払い方式

ベーシス・リスク

保険約款、免責条項、不担保条項

インデックス(指標値)と基礎となるロス・エクスポージャーとの相関関係

請求プロセス

複雑:損害鑑定人による査定が基本となり手続きに時間がかかりやすい

明確:指標値に基づくため、迅速な処理

構成

標準的な商品と約款構成、一部カスタマイズ可能

非常に柔軟な構成でカスタマイズされた商品展開(単一トリガー設定、複数トリガー設定)

出典:スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ

課題

こうした新しいソリューションを理解し組成するためには、早い段階における組織としての高いコミットメントが求められます。リスクマネージャーは、新しいスキルを獲得し、社内の様々な部門と議論を行う必要があります。

  • パラメトリック型ソリューションが自社ビジネスモデルのどの領域に関係するかを特定する
  • ビジネスモデルに相関するリスクについて信頼性と独立性のあるデータを提供する
  • ソリューションの内容を説明し、コスト面について社内の支持を得る

ビジネスモデルの評価

 カギとなる知識:事業戦略

パラメトリック型ソリューションでは、従来型保険では対応できなかったリスクに対して、また より一般的には従来型保険の免責条項や支払限度額によって発生する補償ギャップを埋めるための補償を提供しています。何を目的とするのかを知ることは重要なポイントです。最初のステップとして、「どのリスクが保険で担保できるのか」という従来の考え方や、過去のイベントを調査するという後ろ向きのアプローチを捨てる必要があります。ビジネスモデルを理解し、企業のキャッシュ・フローにどの様な影響を与えるのかについて評価することを出発点としなければなりません。

1:企業が対応するリスク範囲の広がり(出典:スイス・リー・インスティテュート)

リスクマネジメントと企業戦略の結合

1.

ビジネスモデルとリスクを十分に理解する

2.

無形資産に対するリスクとそれに関連するリスクを特定する
パラメトリック型ソリューションが有効に機能する分野を検討する

3.

事業収益の流れ、キャッシュ・フローおよびその依存関係を最高財務責任者(CFO)と各部門に理解させる

4.

キャッシュ・フローの裏付けとなる主要なプロセスとシステムを理解する

5.

これらのプロセスを妨げる可能性がある外部イベントを特定する。
パラメトリック型ソリューションは、従来型保険では対応できなかったリスクについても機能するため、あらゆるリスクが検討対象となる。過去に対象としてきたものは天候および自然災害のリスクだが、人災によるリスクに対しても普及しつつある

6.

自社の枠を超え、サプライチェーンとそのリスクについても評価する。
災害が起きやすい地域のサプライヤーのために補償を行う可能性を検討する

"「現代の人災による保険リスクに加え、デジタル技術が進歩していることや、大量のデータが利用可能となったことで、リスクのモデリングは新たなレベルに到達しています。当社は保険会社として、かつては保険を付与することが困難だったリスクの発生確率を正確に定量化することができます。当社は革新的なソリューションについて議論できることをうれしく思います。」クリスチャン・ヴァートリ、スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ "

データの収集

パラメトリック型ソリューションを開発するためのデータ収集は、難しい課題となる場合があります。こうしたデータは、保険担当者が通常関与している社内チャネルからは得にくいものです。この課題は以下の2つの面から成ります。

1.

インデックス
選択したリスクについてのインデックスを作成するため、独立性、信頼性および一貫性がある情報のデータソースを見いだす必要があります。 
データは、引受の裏付けとするための適切な期間に亘って入手されなければならず、また 契約の有効期間を通じて収集可能なものでなければなりません。

ブローカーや保険会社を活用することも可能です。従来、インデックスは外部の情報源から収集するものでした。例えば、降水量、気温や降雪日の情報については測候所から、また地震情報については関連する機関から取得していました。しかし、保険の対象は進化しており(例えば、テロリズムやパンデミックに対するソリューションも検討対象になってきている)、保険会社は今やサイバー攻撃や風評被害による影響にも目を向けています。データが収集されていれば(それが外部からのものか、ブローカー/保険会社が保有しているものであるかを問わず)、パラメトリック型ソリューションを検討する価値があります。 

2.

業績とのつながり 
トリガーとなる指標と、企業の損失エクスポージャーの相関関係の検討が必要となります。しかし、相関関係が認められた場合には、プライシングはデータのモデリングに基づいて決定されるため、契約条件を決めるために必要となる情報量は、従来型の保険に比べて少なくなります。 

カギとなるスキル:データの要件と解析

リスクマネージャーは、必要なデータと収集の理由を明確にしなければなりません。

リスクマネージャーが社内関係部門にデータを要求する際は、具体的でなければなりません。データは目的を持って、長期にわたり一貫して収集しなければならず、信頼性が高いものである必要があります。

パラメトリック型ソリューションには考え方の転換が必要

 

社内のサポートを得る

企業は、手頃なコストでリスク・エクスポージャーを十分に軽減する補償条件を期待しています。パラメトリック型ソリューションの購入は、最後のハードルでつまずく可能性があります。そのハードルとはコストです。懸念されるのは、取締役会が保険をコモディティー(一般商品)の購入とみなす傾向が強まり、コストの抑制を過度に重視する可能性があることです。

パラメトリック型ソリューションが、従来 保険で引き受けられなかったリスクを対象とする場合、追加的なコストがかかることは避けられません。一方で、取締役やシニア・マネージャーは往々にして、新たなソリューションよりも、よく知っている内部統制に重点を置くことを好むものです。保険担当者は、補償の内容について、社内の共感を得られる方法で説明し、コスト面の期待については出来るだけ早い段階に議論を行う必要があります。

極めて重要な味方となるのは、やはりCFOです。保険担当者は、リスクから企業の損失を守るため、リスクに想定される総コストと財務戦略との関係を説明するためにCFOの専門知識を活用しなければなりません。

  • リスク・イベントが発生した場合、最大予想損失額はいくらか?
  • その後のキャッシュ・フローへの負担はいくらか?
  • 組織のリスク許容度はどれくらいか、どの程度まで損失に耐えられるか?
  • 損失額の程度によってどの様な財務措置(追加的な借り入れ、減配または株式市場への通知など)が必要となるか?

取締役会向けに提案する際に、保険担当責任者は以下を強調すべきです。

  • 補償対象のリスク・イベントは、コントロールや防止が困難であること。
  • 補償対象のリスク・イベントは、従来型保険の担保危険よりも頻繁に発生していること(例えば、20年に一度ではなく5年に一度の確率で発生しているとか)。
  • したがって、補償内容は実態に即して設計されており、補償料も同様に設定されていること。
  • パラメトリック型ソリューションが、経営幹部の主要関心事である資本と業績の変動を防ぐものであること。
  • 補償は企業の財務状況と事業環境に合わせてカスタマイズされるオーダーメイドであり、競合他社が同じものを購入する可能性は低いこと。

今後について

パラメトリック型ソリューションの導入には、従来型保険とは異なるアプローチが必要です。導入のための障害を軽減するため、一部の企業では、利益保険の要素の一部である臨時費用の部分のみ「パラメーター化」することや、自社のキャプティブでパラメトリック型をテストすることを通じて、新たな世界へと徐々に移行しています。

エアーミックの会員企業では、パラメトリック型トリガー(例えば、マグニチュードや中心気圧などの実測値など)を従来型保険の免責部分に関連付けることで、自社の損害保険プログラムに取り入れることに関心を示しています。従来型保険において自己負担額(免責金額)は高額で設定されているかもしれませんが、パラメトリック型トリガーが発生した場合、この保有額を減少させることが出来ます。例えば、航空会社は高額の自己負担額(免責金額)を設定しているケースが多いですが、火山灰の雲が発生して飛行機が離陸禁止となった場合、パラメトリック型ソリューションによって自己負担額をより対処しやすい水準まで減少させることができます。

"「パラメトリック型トリガーを自己負担額に関連させることにより、企業の財務状態に合わせて契約を調整することが可能です。業績が好調な時期は高額な自己負担額(免責金額)を維持する一方、事前に合意される「極めて困難」な条件下における財務上の負担を軽減することができます。」スティーブ・ハリー、マーシュ"

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第1回記事『パラメトリック型ソリューションとは?』
第2回記事『パラメトリック型ソリューション 10の誤解』
第3回記事『パラメトリック型ソリューションがかつてなく求められている3つの理由』

注1 トリガーの設定方法により、資金が手元に入るまでの時間は異なります。

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