サプライチェーン:予期せぬ事態への対処

国際的な公衆衛生の危機にとどまらず、備えがイベントの深刻度と影響において重要な役割を果たします。

新型コロナウイルスのパンデミックの教訓を十分に学び取るには時期尚早かもしれませんが、サプライチェーンの混乱はこの危機の初期段階から明らかでした。企業は突然の不意打ちにあい、多くの企業はこれまで把握していなかった脆弱性をしっかり認識することとなりました。

実際のところ、あらゆる規模の企業が直面した混乱の深刻さについては、パンデミックに対する備えの欠如が重要な要素だったと、スイス・リー・コーポレート・ソリューションズのRisk Engineering Services AmericasのマネージャーであるCyril Darribereは語っています。

Darribereは次のように説明します。「中小企業やミドルマーケットのお客様においては、頻度は高いものの影響度はそれほど大きくはない保険金請求が発生することがあると思います。しかしながら、大企業のお客様の場合には、頻度は低いものの、極めて影響度の大きな保険金請求になる場合があります。」

「中小企業のお客様とFortune 500にランクインするような企業のお客様との間に共通する特徴は、事業継続計画を策定していたとしても、パンデミックの範囲が十分に考慮されていなかった、ということです。これは特殊な状況でしたので、企業は実際にその備えができていませんでした。私達は何世代にもわたってパンデミックの経験がなかったのです。」

突然発生した問題

国際的な公衆衛生の危機にとどまらず、備えがイベントの深刻度と影響度に対して重要な役割を果たします。「予測できない災害が予測できる災害よりも著しく深刻な打撃をもたらす可能性があるという良い例が自然災害です」とDarribereは指摘します。

例えば、北米の気象現象については、大半の人々がハリケーンを懸念事項の上位に置くでしょう。しかし、Darribereは「その頻度が増えることで企業は備えができ、リスクの軽減や移転のソリューションを用意することができる」と語っています。

自然災害が頻発することによって、マーケットでの懸念の度合いがある程度低下することがあります。ただし、米西海岸の森林火災など、自然災害が増えている地域については注視しなければなりません。
Cyril Darribere, Mgr Risk Engineering Services Americas, Swiss Re

「一部のお客様は、予測しなかった地域で竜巻が起きる、あるいは予想外の地域で激しい洪水が起きるといったサプライズも経験するかもしれません。私はこのようなことを懸念しています。例えば、ハリケーンの進路はここ数年で変わってきています。2週間のうちにカテゴリー4のハリケーン2つに襲われたニカラグアで何が起こったかを見てください。残念ながら、被災した住宅の所有者や企業は米国と同程度の保険には加入していない可能性があります。」

北米市場は、2011年にタイで起きた洪水や2016年の熊本地震のような自然災害で発生したサプライチェーンの混乱に対して十分な備えができていませんでした。これはサプライズ効果、すなわち、わずかな人々しか考えの及ばない最悪の事態のシナリオなのです。」

変わりゆく供給の特徴

米国や海外で起きた新型コロナウイルスのパンデミックおよび大規模な自然災害によって、グローバル化が進んだ生産プロセスが直面しうるリスクが露呈されました。その結果、多くの企業は、インソーシングやニアソーシングを通じて、効率性を取り入れる新たな道を模索しているかも知れません。

スイス・リー・インスティテュートの最新のシグマレポート「グローバルサプライチェーンにおけるリスク回避:レジリエンス強化のためのリバランス」 によると、グローバルに事業を展開しているメーカーは生産拠点の再配置や国内回帰をさらに進める可能性が高いでしょう。レポートでは、特に製薬、医療用品および半導体産業は新たな事業展開を検討している、と述べられています。

一方でDarribereは、こうしたプロセスや、ジャスト・イン・タイム方式の配送とリーン生産方式への依存は、企業に新たなリスクをもたらす可能性があると注意を促します。

Darribereは次のように説明します。「商品化までの期間は劇的に短縮されており、したがって、保険加入者が負うサプライチェーンリスクはより計算されたものになっていると考えられます。恐らく、2~3社のサプライヤーを抱えるよりも単一のサプライヤーとの関わりにとどめるという迅速なオプションを模索するかもしれませんが、これによって複雑性は軽減される一方で脆弱性は高くなる可能性があります。サイバーリスクもまたサプライチェーンに係る保険金請求に関して注意が必要であり、特に医薬品業界に対しては注視しています。

「リスクマネジメントについての経験が十分でなく、エクスポージャーを正確に認識できておらず、混乱を経験したことがないお客様にとっては、とても大きなチャレンジとなるでしょう。」

より良い認識に向けた道筋

Darribereは、企業が新たに出現するサプライチェーンの脅威を管理することを支援するため、保険会社はその啓発において重要な役割を果たさなければならない、と主張します。しかしながら、これは簡単なことではありません。というのも、多くの企業はサプライチェーンのエクスポージャーに関するデータや情報を保険会社と共有することを逡巡してしまうことがあるからです。Darribereは次のように結論付けます。

私としては、将来的には「サプライチェーンのツールキット」を提供したいと考えています。これについては、私達がお客様のサプライチェーンを確認・例示し、エクスポージャーを特定することに加え、その軽減対策の策定を支援することを考えています。
Cyril Darribere, Mgr Risk Engineering Services Americas, Swiss Re

「私達の役割はお客様のリスクアドバイザーとして機能することです。私達は、ニュースレターやウェブサイト等を通じてサプライチェーンの問題に関する意識の啓発に努め、これと同時に、リスク管理部門を持たない企業に対して事業継続計画のテンプレートを提供していきたいと考えています。」

結論として、Darribereが主張する事業の継続性を構築するための中核的な4つのステップは次のとおりです。

  1. 復旧に時間がかかる又は重要であるプロセスの中断によってもたらされる潜在的な影響度を判断するためのビジネスインパクト分析(Business Impact Analysis: BIA)
  2. 定量的および定性的な観点からのリスク評価の実施
  3. 損害の発生を防ぐ又は損害の深刻度を低下させるための軽減対策のレビュー
  4. 施設、その他のメーカー、またはサプライヤーとの間での補完機能を考慮し、重要業務にかかる事業中断を防止または最小限に抑える、テーラーメイドの災害復旧計画の策定

初版はStrategic Riskにより2020年11月30日に発行

当社リスク・エンジニアリングについてはこちら をご参照ください。

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