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※本記事は「パラメトリック型保険」の概要を説明するものであり、取り扱いは各国の規制により異なります。Swiss Reグループとして「パラメトリック型保険」を取り扱っていますが、国内でスイス損害保険会社(スイス・リー・インターナショナル・エスイー日本支店)が提供する保険商品ではありません。

近年、テクノロジーの進化やデータ分析の活用により、企業向け保険の範囲が拡大し、幅広い脅威、リスク、災害などに対する補償が提供されるようになっています。パラメトリック型保険やインデックスベースのソリューションは、透明性が高く保険金の支払いが迅速で、物的損害がなくても保険金が支払われることもある1ため、引受が難しいリスクの補償手段として検討されることが多くなっています。

「パラメトリック型保険」についてブローカーやお客様との会話から関心の高さはうかがえますが、その一方で内容や仕組みについてはいまだに混乱があるようです。そこで、シリーズの最初の記事として、この概念を簡単に解説したいと思います。
 
「パラメトリック型」ソリューションの難解さを取り除く
ほとんどの皆様は、従来型の企業向け財物保険の仕組みをご理解していると思います。通常は、補償に対する保険料を支払う見返りとして、偶発的な事故や特定の担保危険により実際に被った損害を補償するという仕組みです。保険金は実際の損害を査定・調査した後でしか支払われず、保険事故が発生する直前の状態に原状復旧させることが保険の目的となります。パラメトリック型ソリューションは、比較的新しい概念ということもあり、理解度はまちまちです。

パラメトリック型ソリューションとは何なのか?
「パラメトリック型」という名称から、その内容が分かりにくくなっているかもしれませんが、非常に直接的な意味として使われています。

基本的に、パラメトリック型(もしくはインデックス型)ソリューションとは、実際に被った損害を補償するのではなく、あらかじめ定義されたイベントの発生確率を補償する商品です。

定義されたイベントが発生した時点で補償を行う契約であり、実際の資産や関連するインフラ等への影響とは切り離されています。ここで、2つの主要構成要素に分けて見ていきましょう。

パラメトリック型ソリューションは、常に以下の要素で構成されます。

1.トリガーイベント

被保険者の特定のリスクに関連する客観的なパラメータやインデックスを測定し、あらかじめ定義されたイベントパラメータを満たすか超えた場合に発動されます。

例えば、地震、熱帯性低気圧、洪水がイベントとして設定され、マグニチュード、風速、降水量などがパラメータやインデックスとして定義されます。自然災害(Nat Cat)や気象イベントは最も一般的なトリガーですが、市場指数、収穫高、停電などもトリガーとして設定することができます。

対象トリガーの主な基準は次のとおりです。

(i)偶発的であること
(ii)モデル化できること

2.    支払いの仕組み

財物損害が発生したかどうかにかかわらず、パラメータやインデックスの設定条件(指標値)を満たすか超えた場合に、事前合意された金額が支払われます。

例えば、次のような仕組みになります。

  • 所定の地域でマグニチュード7.0の地震が発生した場合に1,000万米ドルを支払う
  • 所定の地域でカテゴリー5のサイクロンなどの熱帯性低気圧が発生した場合に3,000万米ドルを支払う
  • 定められた降雨量を超えた場合に、累積降水量1ミリメートル毎に5万米ドルを支払う。

設定条件(指標値)は通常、お客様自身の事業継続計画やリスク許容度に合わせて設定されます。例えば、現時点で相応のリスク軽減対策を講じているため、マグニチュード7.0の地震が発生しても事業を継続できると考えているお客様も、マグニチュード7.0を超える地震が発生した場合には、リスク移転のためのソリューションが必要になるかもしれません。こうした設定条件(指標値)レベルの発生可能性は、当然にその補償料に反映されます。

パラメータまたはインデックスとは?
適切なパラメータやインデックスとは、具体的なリスクそして企業が被る財務的損失に関連付けられる客観的な尺度になるものです。つまり、「シナリオ」に関連する「測定可能な指標」です。例えば、降雨は建設プロジェクトの工期に、地震は企業の財物資産の損害にそれぞれ影響を与えます。

パラメトリック型ソリューションの基準として使用するパラメータやインデックスには、客観性(つまり、独立して検証可能)、透明性、一貫性が求められます。迅速な支払いのために、容易に測定可能で、すばやく効果的に報告できる指標を求めています。重要なことは、モラル・ハザードを回避するために、保険会社や被保険者がイベントや報告に影響を与えられないものを選ぶことです。そのため、パラメトリック型ソリューションでは、気象や「天災,
不可抗」に関する指標が大半を占めています。

以下に、いくつかの関係機関とそのパラメータやインデックスを挙げます。

  • シンガポール国家環境庁(NEA)汚染基準指数(PSI)
  • 香港観測所(HKO)台風警報信号
  • 日本気象庁(JMA)震度
  • 米国地質調査所(USGS)地震マグニチュード
  • オーストラリア気象庁(BoM)熱帯低気圧カテゴリー

従来型保険とパラメトリック型/インデックス型ソリューションの補償範囲 - その違いとは?
従来型保険とパラメトリック型ソリューションの補償範囲の違いについてよく問い合わせを受けます。

ここで重要なことは、パラメトリック型ソリューションは、従来の保険プログラムの代替ではなく、補完する存在として設計されているということです。パラメトリック型ソリューションは、免責金額、保険対象外の災害、引受能力の不足、企業のコントロール外の領域(例えば、サプライ・チェーンの途絶による業務の偶発的な中断など)での純粋な経済的リスクなど、従来型保険ではカバーしきれない補償ギャップを埋めることができます。  

以下の表では、従来の補償型保険とパラメトリック型ソリューションの主な違いをまとめるとともに、支払いトリガー、支払い基準、ベーシス・リスク、請求プロセス、契約期間、約款構成について説明しています。

従来型の保険

パラメトリック型ソリューション

支払いトリガー

実際の損失や財物への損害が支払いのトリガーになります。

火災によって財物に物的損害が発生すると、その物的損害と事業の中断による損失が発生します。

パラメータの設定条件(指標値)を超えるイベントが支払いのトリガーになります。

例えば、所定の地域でマグニチュード7.0以上の地震の発生を支払のトリガーとする。

支払い基準

実際に被った損害額の補填。

火災で被った実際の損害に関する現地調査(損害査定)と事故原因の調査などが必要となります。

イベントパラメータやインデックス値に基づき、事前に合意された金額の支払。

地震のマグニチュードが高くなるほど、支払い金額を高くすることもできます。

ベーシス・リスク

保険約款、免責条項、不担保条項。

従来の保険約款には、往々にして膨大な数の免責条項や不担保条項が定められています。こうした条項は、従来の補償型保険において、契約者と保険会社の利害を効率的に一致させる手段として使用されます。

しかし、契約者側にとっては、広い範囲のリスクが補償されないまま放置されることになります。


選択したインデックス、保険金支払い、損害との相関関係。

ベーシス・リスクとは?
ベーシス・リスクとは、支払トリガーとしての指標値が、基礎となるリスク・エクスポージャーと完全に相関していないため、契約者が損害を被ったにもかかわらず、実際の損害額とパラメトリック型ソリューションで受取る金額にギャップが生じるリスクです。

ベーシス・リスクは、指標値ベースの商品では完全に排除できませんが、ダブル・トリガーやスタッガード支払いなど、より高度な商品設計をすることにより最小限に抑えることができます。

例えば、熱帯性低気圧の場合は、カテゴリーの低い嵐については一部支払いとし、強い嵐については段階的に支払い額を上げていきますこともできます。

クレーム
請求プロセス –
損害評価と支払い

複雑で、損害アジャスターの査定評価を基準とします。

損害の程度によっては、損害査定に数ヵ月から数年かかる場合もあります。

透明性と予測可能性が確保され、パラメータやインデックスに基づいて迅速に手続きが完了します。

損害査定が不要なので、イベント発生から4週間以内にすばやく支払が行われます。

必要となるのは対象となるインデックスの確定または測定のみです。通常、この作業は国の気象機関などの第三者機関が行います。

期間

通常は1年

複数年契約もありますが、組成がより困難になるため、一般的ではありません。

1年または複数年

複数年契約が一般的です。

構成

標準的な商品と約款構成、一部カスタマイズ可能。

一般的に、従来型保険商品のカスタマイズ範囲は限定的です。保険会社は依然として業界標準の保険約款での商品を中心に販売しているのが現状です。

非常に柔軟な構成でカスタマイズされた商品を展開。
パラメトリック型の約款テンプレートは、内容の基本的なものを示すものでしかありません。各契約ごとにお客様に適したインデックスと支払い条件を設定するため、一般的な「標準」約款は存在しません。お客様のニーズと目的に合わせて個別に商品設計され、単一トリガーや複数トリガーなど様々に設定することができます。

   
要約
パラメトリック型ソリューションは、実際に被った損害を補償する従来型の保険商品では対応困難な事象に対して有効です。補償の範囲を広げ、損害査定プロセスの複雑さを排除し、流動性や迅速な支払いによってお客様に安心を与えることができます。

この記事では、基本に立ち返り、基礎となるコンセプトをわかりやすく解説いたしました。パラメトリック型ソリューションの基礎を確認したところで、次回の記事では、よく聞く誤解について正していきたいと思います。

注1: 各国の法規制により保険として取り扱われない場合もあります。

岩崎 智哉 PH.D.

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