「災害見舞金制度」– 被災従業員への貴重な一助、同時に財務負担への備えも

企業の福利厚生として「災害見舞金制度」が存在するのはご存じでしょうか?

これは従業員の住居や家財が自然災害等で一定の被害を被った場合に、企業からその従業員に対して見舞金が支払われるというものです。

労務行政研究所「東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)への対応アンケート」(調査期間:2011年3月28日~3月31日)によると、81.7%の企業が災害見舞金制度を設けています。災害見舞金の平均支給額は、26.5万円(全損失の場合)ですが、中には100万円以上支給する企業もあります2。また、支給対象は社員のみではなく、パートタイマーを含む場合もあります3

被災時の生活再建に役立つ災害見舞金 - 企業から被災従業員への貴重な一助

被災した従業員は、支給された災害見舞金を、生活再建のために役立てることが出来ます。

住居が全壊した場合は、多くの場合は建替えが必要なため、一般的に数百万円から数千万円の費用が必要になります。「平成28年熊本地震にかかるアンケート調査報告書」(熊本市政策局、2016年)4によると、住宅の補修、建設・購入費用に関し、半壊でも32%の世帯が100万円以上の費用が必要だと回答しています。また、全壊、大規模半壊、半壊のいずれの罹災区分の世帯も、住宅の補修、建設・購入費用は「わからない」もしくは「無回答」が5割以上と最も多い回答になっています。これらの回答世帯は、調査時点4で住宅再建にめどが立っていない等の理由が考えられますが、住宅再建のめどが立たない要因としては、6割以上の被災者が「資金不足」を理由としています。

また、住居の再建費用以外にも、様々な支出が必要になります。内閣府作成の「平成24年度被災者生活再建支援法関連資料報告書」によれば、東日本大震災の際にかかった生活再建に必要な費用(住宅再建の費用以外)に関し、「家電製品」の購入・修理に84%、また家具の購入・修理に71%の被災者が10万円以上を支出しており、その他にも冷暖房器具、寝具、自然災害による負傷又は疾病の医療費などが支出されています。また同報告書の中で「その他」として82%の被災者が10万円以上を支出していますが、これには日用雑貨、引っ越し費用、交通費等の費用が含まれます。

このように、被災後は多額な費用が必要になる一方、国の制度である被災者再建支援法で支給される金額は、全壊の場合で最大300万円です。募金や自治体を通じて給付される義援金もありますが、決して十分なものとは言えません。また、保険に加入している場合でも、建物や家財、その他の費用の全てを補償してくれるわけではありません。そのため、生活再建を目的として本来は将来を見据えていた貯金を取り崩さなければならない状況や、そもそも貯金が充分ではなく生活再建が困難になる場合もあります。被災者が抱える資金ニーズに対して、更なる複層的な資金サポートが求められています。

企業は管理財物の損害や事業中断に伴う損失以外にも災害見舞金給付による財務負担にも備える必要がある

地震や台風、集中豪雨等の自然災害で被災した場合、管理財物への損害や事業中断に伴う損失が発生することは広く認識されています。しかしながら、自然災害時に被災した従業員への見舞金給付による財務負担は、あまり認識されていないように思います。特に、従業員の居住地が特定地域に集中している会社首都直下地震や南海トラフ巨大地震など広域災害が発生した場合に一定規模の従業員の被災が想定される会社は、一度の災害で多額の見舞金給付が想定されます。

災害見舞金給付による費用を補償する保険がある

被災後の災害見舞金給付の支給は、企業から被災従業員への貴重な一助となりますが、多額の財務負担が発生する可能性が考えられます。これを裏支えする手段として約定履行費用保険があります。

この保険では、企業が被保険者となり、被保険者が自社の災害見舞金に関する規約に基づき従業員へ災害見舞金を給付すると、その給付が被保険者にとっての費用損失と見做され、保険金で補償されます。これにより、自然災害時の企業の財務損失リスクをより低減することが可能となります。

今一度、従業員に対する災害見舞金制度を見直すとともに、災害見舞金制度の安定運用に資する保険もご検討されてみてはいかがでしょうか。

1災害見舞金"取り扱い決定企業"のうち、「災害見舞金制度はない」「その他」の回答を除く割合
2 共済会等から支給がある場合は合算金額
3 労務行政研究所「慶弔見舞金、慶弔休暇に関する実態調査」(調査時期:2017年1月10日~3月6日)より、近年の震災被害を踏まえて支給対象の拡大を図る企業もあります。
4 熊本市政策局「平成28年熊本地震に係るアンケート調査報告書」(2016年)、調査期間は2016年9月28日~10月27日、被災から5か月~6ヶ月経過後のアンケート調査結果となります。

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