重要な港湾における地震の備え

地震の発生により港湾や空港での業務が中断および停止した場合、パラメトリック型保険がサプライチェーンの崩壊阻止において果たす重要な役割をご紹介します。

例えば、紙製品、衣類、おむつ、食料品など、私達が社会全体で依存している必需品が、世界各地の港湾や空港に大量に到着しているとします。想像してみてください。このような場所を大規模な地震が襲えば、莫大な物的被害が発生し、港湾や空港での業務が停止するでしょう。従来型の保険や政府の資金源から得られる修理および業務再開のための資金は、使用できるまでに時間がかかります。

その結果、船舶や航空機が出航できなかったり、その他の場所で待機状態となったりするため、物品や貨物の荷下ろしや最終目的地への積み替えが遅延します。 サプライチェーンと経済が停滞すると、個人は必需品を入手できなくなり、企業は予想されていた収益を生み出せないばかりか効率的な運営ができない状態となります。

このような事態に対する保険ソリューションとして、パラメトリック型保険というものがあります。これは、地震による経済的な脅威をより効率的に管理して必要な流動性資金を確保する助けとなるものです。

現状を考えると、このような仮定に基づく事態は、必ずしも想定外とは言えないでしょう。世界規模のサプライチェーンは、私達の経済と社会が依存している商品の製造と輸送、サービスの提供において、その脆弱性を露呈させています。COVID-19のパンデミックに関連する影響は、労働者の不足に限らず、感染拡大による施設の閉鎖、製造能力の医療機器への再割り当て、各種商品の供給と需要の予測と実態のズレなどさまざまな方面に波及し、サプライチェーンの課題は、自動車ディーラーから個人経営の書店に至るまでさまざまな業種でビジネス規模に関わらず、価格と在庫に影響を及ぼしています。現在の混乱は当面続くと予想されているため、今後数週間から数ヵ月間にわたり、贈答品やその他の休暇関連商品は長い待ち時間を想定して計画を立てるように言われています。

私達がいつでも利用できると思っている商品やサービスに不都合が生じている一方で、港湾や空港などのサプライチェーンの主要なインフラは、大部分が稼働しており、物理的な物品の受け取りや配送において引き続き重要な役割を果たしています。

サプライチェーンで特に重要なインフラとして位置づけされるのは、米国とカナダの西海岸にある港であるロサンゼルス、ロングビーチおよびバンクーバーになります。

これらの港にアジアから到着する物品の量は膨大であるため、貨物船がコンテナを適宜荷下ろしできる能力はサプライチェーンの重要な要素になります。平均的な貨物船でバンクーバーへ輸送されるコンテナの数は、2019年以降12%増加し、ロングビーチでは70%以上も増加しました。

現在の人員配置で起きている問題は、荷物を満載した何十隻もの貨物船やコンテナが、西海岸に留まっていることを意味しています。NBCのToday ShowNew Yorkerは2021年10月初旬の時点で、ロサンゼルス沿岸部に船団が停泊し、米国本土であらゆる種類の商品が不足していると報道しました。しかし、港湾は引き続き稼働しており、船舶を受け入れて貨物の荷下ろしを行うことができる物理的な能力を備えています。

港は沿岸地域に位置するため、その多くが地震時の地盤振動や液状化の影響を受けやすい、軟弱な土壌や埋立て地に建設されています。

2010年のチリ地震、2011年と2016年のニュージーランド地震、2011年の東日本大震災の発生時に見られたように、大規模地震によって港自体が破壊され、深刻な被害を受ける可能性があります。このような損害の最終的な結果として、西海岸の港湾が数週間、数ヵ月、さらには数年間にわたって操業できなくなることが考えられます。これは損傷の程度およびさまざまな種類の資金(FEMA、従来の保険、州政府の持つ緊急資金)のタイミングと金額によって変わってはきますが、いずれもすぐに解決できるものではありません。 このように、世界規模のサプライチェーンは、地震に関連していつでも閉鎖や経路変更などの悪影響を受ける可能性があるのです。

現状を考えると、地震から速やかに復旧できず業務再開できなくなる状況が発生すれば、現在の脆弱な世界経済に壊滅的な打撃を与える可能性があります。

地震が発生しやすい地域では、港湾や空港の持つ重要な特性から、そこに従事する企業は、少なくとも業務を再開できるようにするため、地震発生直後に一定程度の資金流動性を確保しておく必要があります。さらに、港湾内外で事業を展開する企業は、不測の事業中断(CBI)による損失からバランスシートを守るための資金を必要としていますが、従来の保険市場では物理的損害が利益補償の要件となっているため、このリスクは付保することが難しいことで知られています。

このような事案の際に、パラメトリック型保険は一定の役割を果たすことができます。パラメトリック型保険は、地震による最終的な被害額に対してではなく、地震の揺れの強度に基づいて補償設計され、当該事業の継続に利害関係を持つ資産所有者並びに事業者双方が加入できます。パラメトリック型保険の保険金請求の決済は非常に透明性が高く、地震の揺れが大きいほど保険金が多く支払われます(保険契約に定められた条件に基づいて決定されます)。

米国地質調査所によって地震発生後 迅速に地震データが公表されるため、保険金の支払いも迅速に行われます。2020年3月に発生したマグニチュード5.7の地震に対してユタ州が行った保険金請求は、1ヵ月以内に支払われました。さらに最近では、8月29日に上陸したハリケーン「アイダ」に対するパラメトリック型保険の保険金支払は、レイバー・デー(労働者の日)の週末(9月4日)までに支払が完了したとの報告がなされました。

パラメトリック型保険の迅速で透明性の高い保険金支払い機能により、当該保険に加入する港湾や空港は地震後の数日以内に現金を受け取ることができます。そのため、予想よりもはるかに速やかな業務再開が可能となり、サプライチェーンのボトルネックとなることを防ぎ、世界経済に対して不要なストレスを引き起す可能性を減少させます。

迅速に資金流動性を確保できたとしても広域損害を魔法の様になくすことはできませんが、企業は即時の資金を得ることによって、さまざまな費用をカバーでき(このような費用には輸送コストの急激な上昇、災害後に発生する未完成品/完成品や人件費などの全般的な高騰も含まれます)、船舶の航路の再選定や別の港への航路変更を可能にします。

詳細については、パラメトリック型ソリューションウェブサイトをご覧ください。また、ユタ州の実例について参照ください。

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