
パラメトリック型保険:従来型保険補償の代替案
高まる自然災害リスクと変わりゆく市場ダイナミクスの組み合わせは、リスクマネージャーにとって複雑な環境を作り出しています。保険料が上昇傾向にある一方で、補償範囲が縮小されているケースが多々あります。このような背景から、パラメトリック型保険への関心が高まり、実際に採用されるケースが増えています。
過去数年間で定着したものを1つあげるとすれば、不確実性になります。絶えず変化し、ハード化が進んでいた保険マーケットに、新たな問題としてパンデミックが加わりました。高まる自然災害リスクと変わりゆく市場ダイナミクスの組み合わせは、リスクマネージャーにとって複雑な環境を作り出しています。保険料が上昇傾向にある一方で、提供される補償範囲が縮小されているケースが多々あります。
このような背景から、従来型の保険プログラムに加え、パラメトリック型保険への関心が高まり、実際に採用されるケースが増えています。
パラメトリック型保険の明確なメリット
テイラーメードのパラメトリック型保険商品は、個々のお客様に合わせてカスタマイズが可能で、特定の事象に対する確実性を提供します。このような特徴によりパラメトリック型保険は、一般の市場で補償を購入できなかった事象やリスク、または、以前なら「保険適用外」とされた事に対し、補償の提供が可能となります。
保険金支払いのスピードも、パラメトリック型保険の魅力です。パラメトリック型保険は、例えば、地震の震度や風速などに基づいて、明確に定義されたパラメータを使用して契約内容が決められます。そのため、合意された水準を超える事象が発生すると、長期にわたる請求プロセスが省かれ、短時間(通常は30日以内)で保険金の支払いが行われます。
損害が物理的なものに留まらず、収益の損失や事業中断に及んだ場合、迅速な保険金の支払いは大きな違いをもたらします。
パラメトリック型保険を通じて特定のリスクに対する補償を購入することで、一般的な保険プログラムをよりシンプルかつ効率的にすることも可能です。
企業にとって魅力的なオプション
大規模な災害がどれほどの影響を及ぼすかを目の当たりにした企業は、新しい視点で自社のリスク・エクスポージャーを評価する傾向が高まっています。その多くは、既存の補償を補完し、特に脆弱な分野において、物理的な損害を超えた損害に対する一定の補償を模索しています。気候変動によって深刻度を増す自然災害は、リスクマネージャーが保険商品の選択肢を見直す主な要因の1つとなっています。
フランスでは、現時点でパラメトリック型保険の主な契約者は、国際的企業となります。
このような企業にとって、ハリケーンが襲来しやすいカリブ諸国や米国、地震が頻発する日本などの地域において、リスク・エクスポージャーを相殺することが可能となるからです。
対照的にフランス以外では、公的な資産に対するリスクを軽減する目的で、政府がパラメトリック型を利用する例が増えています。例えば、米国ユタ州政府はパラメトリック地震補償を契約しています。これにより、2020年3月にソルトレイク・シティ地区にマグニチュード5.7の地震が発生した際、州政府は地震発生後4週間以内に補償金を受け取りました。これは、すでにCOVID-19のロックダウンで経済的に疲弊していた州政府が、震災に伴う初期費用を賄う上で大きく役立ちました。
テクノロジーの進歩による、保険補償の適用範囲の拡大
テクノロジーとデータ収集の大幅な進歩により、パラメトリック型保険の魅力が増しています。高品質できめ細かなデータにより、これまで以上に事象を追跡できるようになりました。また、当社が危機に対する理解を深める上でも役立っています。これにより、リスクの価格付けがより可能となるたけでなく、リスク緩和策の根拠もさらに明確になります。
例えば、Swiss ReのFLOAT製品では、ドローンを使用して高精度の標高データを取得し、特定の地域で施設を視覚化できるデータに変換をすることができます。また双方向型のシミュレーションにより、洪水に対する潜在的な脆弱性を評価し、洪水に関連する損害を予測することもできます。
FLOWは、高精度データから生まれた、もう1つの保険商品です。これは、指標に基づく水位保険であり、河川の水位にさらされる欧州の企業を対象としています。保険契約者は、対象となる水位の変動に基づいて保険料を支払い、しきい値を超えた場合は、事前に合意した保険金の支払いを受けます。FLOWは当初、2018年にドイツで厳しい干ばつが発生し、水位の低下が川を利用した観光、交通、運輸などに悪影響を及ぼしたことに対応するために誕生しました。洪水にも同様に適用できます。洪水の場合、近隣の道路や鉄道など、交通機関が影響を受ける可能性があります。
リスクマネージャーは、増大するさまざまなリスクを相殺する必要性に迫られており、パラメトリック型保険の人気が高まっています。ただし、実際に契約に至る背景には、重大な事象の発生が多くあります。
不安定な環境下において、リスク管理を改善するための第一歩となるのは、先見的な観点から自社のすべての脆弱性を理解することです。ここから得られた知識を活用した上で、パラメトリック型は、将来に向けてより高い確実性をもって対応するために活用できるツールになります。
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この記事は、原典はAtoutリスクマネージャーによってフランス語で発表されたものです。