保険の未来:二次災害への備え

正式な定義はありませんが、保険業界において、二次災害とは、高い頻度で起こる軽度から中程度の損失事象としています。二次災害は、干ばつや山火事など個別の事象として起こることもありますし、熱帯低気圧に関連した集中豪雨や高潮のように、一次災害の二次的影響である可能性もあります。

スイス・リー・インスティテュートの自然災害と人的災害の年次シグマ・レビューによれば、2018年に保険対象となった自然災害の損失額760億ドルのうち、60%以上が二次災害によるものでした。二次災害は、2019年に再び被害損失の主要因となりました。そして、二次災害は2020年上半期にも最大損失を引き起こしました。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ、ナチュラル・カタストロフィーAPACヘッドのアレックス・プイは次のように述べています。「2018年、2019年のカリフォルニアの山火事による経済的損失累計額は、台風チェービー(2018年の台風第28号)とハリケーン・マイケルによる損失額を上回りました。損失全体としては落ち着いた年であったにもかかわらず、これは二次災害が大きな損害要因となり得ることを示しています。」

気候変動の影響

二次災害を原因とする損害の中で保険の対象とならないものが増加していることは、気候の温暖化だけが原因であると結論付ける十分な証拠はありませんが、要因の1つであることは間違いありません。近年の温暖で乾燥した状態の頻度およびその深刻さの高まりによって、山火事と干ばつの発生リスクが上昇しています。

プイは次のように述べています。「2009年から2019年は、これまでで最も気温が高かった10年となり、それ以前の記録を大幅に上回りました。地球の大気が温暖化するにつれ、大気中の保湿量が増加し、その結果より激しい水循環が発生します。それによって暴風、さらにはその後の洪水といった災害の基礎的なリスク特性に変質を来たし発生頻度の上昇や規模の拡大を引き起こします。」

しかし、気候変動そのものは、経時的損失拡大の唯一の要因ではありません。人口増加と都市化もまた、特に高リスク地域ではその要因となっています。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ、イノベーティブ・リスク・ソリューションズAPACヘッドのアンドレ・マーチンは次のように述べています。

急成長するアジア太平洋地域では、大勢の人が引き続き都市部へと移住していますが、都市は多くの場合海岸線沿いにあります。結果として、今日、経済資産が密集している地域を熱帯低気圧が直撃する可能性が非常に高まっており、これにより多額の損失が生じる確率も増しているのです。
アンドレ・マーチン, イノベーティブ・リスク・ソリューションズAPACヘッド, スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ

保険料上昇の危険性

二次災害に関連する損失額が増えるにつれ、結果的に保険料も上昇することになるでしょう。保険会社はリスクベースの保険料設定をするため、脅威が高まれば、これを補償するためのコストも上がります。しかし、世界を本当の意味でよりレジリエントにするためには、保険会社は保険料負担と支払い能力を天秤にかけて検討しなければなりません。

プイは次のように述べています。「重要なのは、保険を長期的に持続可能なものにすることです。これは、被保険者と保険会社の間で連携すべき1つの分野です。当社は、より長期的な潜在的ソリューションの検討を目的として、一部の法人顧客と連携し、そのリスク全体像の分析と評価を共同で進めています。山火事や洪水などの二次災害が確実に保険の対象であり続けられる方法を考えるのは、間違いなくお客様と当社双方の利益になります。

そうした気象関連リスクに対し持続可能な保険市場を実現するためには、リスクの軽減を図り、災害後ではなく事前の資金調達の重要性に対する認識を高めることも重要です。単にリスクを知るだけでは不十分です。リスクの軽減は、社会に対してだけでなく、株主に対する企業の社会的責任であるという考えがさらに強まっています。

革新的な新しいソリューション

災害保険全般と同様に、二次災害についても保険ギャップ(無保険損害と保険損害の差)は大きく、さらに拡大する傾向にあります。2018年、保険で補償された二次災害からの経済損失は、世界全体でわずか50%に過ぎませんでした。また、このような保険ギャップはアジア太平洋地域のような新興地域で、一層顕著な傾向があります。

地震など、希にしか起こらない危険に対し保険を購入するよう個人を動機付けするのは難しいですが、異常気象の二次災害は比較的発生頻度が高く、個人の時間軸とも合わせやすいため、異常気象関連の危険は保険ギャップを埋める機会となる可能性があります。

リスク移転に対しては、火事や洪水による財物損害などの脅威に対応した従来の保険商品がわかりやすい選択肢となります。しかし、企業の環境が有形資産から無形資産へと代わると同時に、サプライチェーンがより相互連携するようになると、従来の保険プログラムでは企業を適切に保護することができず、痛みを伴う保険ギャップが残ります。

このギャップを避ける1つの方法は、従来の保険プログラムと、追加補償を提供するパラメトリック型保険の組み合わせによる補完です。

この革新的なソリューションは、事象主導型で、事前に合意したトリガーまたはパラメータに基づいて保険が適用されます。つまり、洪水があるレベルまで到達、または台風が特定の暴風基準を超えると保険が適用され、事象の発生に基づき簡便な計算にしたがって保険金が支払われます。このアプローチの利点は二点あります。第1に、元になるいずれの有形資産にも依存しないため、パラメトリック型保険は、無形資産または従来型保険の対象とすることが出来なかった資産に対しても補償を提供できます。第2に、損失額の確定に透明性があり、保険金支払いが迅速です。被保険者が資金の流動性を最も必要とされるとき保険金を支払い、企業がいち早く立ち直る支援をします。

マーチンは次のように述べています。「パラメトリック型保険は、目新しい商品としてではなく、主流商品として確実に推移しています。新しいモデリング技術とデータ分析における進歩が、更なる発展と画期的かつより効率的な商品の開発を牽引しています。最近の事例では、川の水位、雹(ひょう)の大きさ、ヘイズ汚染(煙による大気汚染)指数に基づいて補償する保険などがあります。当社は、リスクのモデル化に必要な詳細データを保有している一方で、独立した信頼のできる第三者データが活用できるようになっています。」

ハード化する保険市場の現在の環境は、新型コロナウイルスのパンデミックにより更に悪化していますが、これは保険料の値上げに結び付くだけでなく、引受能力、特に自然災害リスクに対する能力を縮小します。このような状況において、リスク・マネージャーは、リスク保有戦略を再考し、キャプティブまたはより体系的な保険ソリューションの導入を通じて、エクスポージャーの自己金融部分について検討することを余儀なくされます。

最後にプイは次のように述べています。「気象を要因とする危険、および気候リスク全般の幅広い影響に関する認識は高まっています。リスク・マネージャーは、より先を見越した対策をとり、単に保険購買によるリスク移転に頼るのではなく、より良い形でリスク評価とリスク緩和ができる方法を模索するようになってきています。」

本記事は、2020年9月25日に Strategic Risk に掲載されたものです。

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