保険の未来:パラメトリック型保険の高まり

パラメトリック型保険の人気が上昇

企業は自然災害などの事業中断リスクから無形資産を守ることの重要性を更に理解してきており、結果としてパラメトリック型保険の人気が高まっています。このような事象に対する損害保険が発売されてからしばらく経ちますが、企業はシンプルさ、スピード、そして幅広い補償に引かれて、従来型保険を補完するものとしてパラメトリック型保険へと目を向けつつあります。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ、パラメトリック・ナチュラル・カタストロフィー・ヘッドのマーチン・ホッツは次のように説明しています。「企業の損失は、直接的な財物損害とその結果として生じる事業中断だけに留まりませんが、従来型の保険は直接損害並びその結果生じる事業中断を主に補償するものです。また、従来の直接損害保険約款には、サブリミット、免責、および不担保条項から生じるベーシス・リスクが存在しています。」

「パラメトリック型ソリューションはこのギャップを埋めるのに理想的です。大規模自然災害は、広範囲かつ長期間続く連鎖反応を持つ傾向があり、その影響が及ぶ対象はインフラ、個人消費、サプライチェーンなど、例を挙げればきりがありません。パラメトリック型ソリューションはこうした状況において役立ち、しかも非常に迅速に補償を提供することが可能です。複数の調査から、大規模自然災害からの復旧時には、資金の支払いが迅速なほど、より効果的な復旧が可能となることが明らかになっています。」

自然災害はかつてないほど増加

パラメトリック型保険商品が人気になっている主な要因の1つに、自然災害そのものの発生頻度と深刻度が高まっていることがあります。企業は異常気象に対する防衛手段として保険で備える努力をしてきましたが、異常気象は以前より頻発し、これによる事業中断リスクが高まっていることから、パラメトリック型保険による迅速で簡単な保険金支払いは、その価値が高まっています。

ホッツは次のようにも述べています。「温暖化した大気はより多くのエネルギーを含んでおり、一層甚大な気象関連災害が生じる可能性があります。また、低地、川の洪水、熱帯低気圧、または台風の影響を受ける地域に居住する世界人口は、この10年で急速に増加しました。」

「効果的なリスク移転が必要なのは明らかです。当社は人、ビジネス、そして社会のレジリエンスをより高める役割を担っています。パラメトリック型ソリューションはこれを実現する1つの方法となり得ます。迅速かつ透明で柔軟なパラメトリック型ソリューションは、有用性の高いリスク移転方法です。」

変わりゆくビジネスの性質

パラメトリック型商品の人気を支える別の要因としては、特にシェアリング・エコノミーによってビジネスの性質が変化していることが挙げられます。より多くの企業が、自社の持つ最も価値のある資産が従来型の保険では対象とならないことに気づき始めています。例えば、タクシー・アプリを提供する企業提供企業は、ほとんどの場合ドライバーが運転する車両を所有していません。同様に、宿泊施設・民宿を紹介する会社は、そのウェブサイトに掲載している施設を所有していない場合があります。

こうした企業は、従来型の財物の直接損害による事業中断保険には適していません。従来型の保険は所有資産に対する財物損害を支払い対象としています。企業が所有しない資産が自然災害から影響を受けた場合、補償を受けられるとは考えにくいでしょう。ホッツは、「事象の発生を支払い条件とするパラメトリック型保険は、こうしたギャップに対応することができ、企業は、嵐、ハリケーン、地震または洪水による財物損害を証明する必要なく、保険金の支払いを受けることが可能となる」と述べています。

また、伝統的なビジネス形態の企業に対しても、その事業活動や収益が被る損害からの復旧に大きく寄与することも可能です。新型コロナウイルスにより在宅で勤務する人が増え、社員の在宅環境とリモート作業能力は、今では密接に事業に関連してきましたが、これが自然災害により損なわれる可能性があります。このような企業の中には、自然災害後に従業員を支援する取り組みとして、パラメトリック型ソリューションを購入するところも出ています。さらにホッツは、観光産業が被った集客力低下の事例を活用の一例として挙げています。地震によってホテルの施設そのものに財物損害が発生しない場合でも、団体旅行の多くがキャンセルされれば、観光客の減少につながります。また、ハリケーンの事例では、ビーチがインスタ映えしないことから、潜在的な観光客が離れてしまいことにもなります。

 パラメトリック型ソリューションは、実際に被った損害ベースで補償を提供する従来型の保険商品では対応できないことを補完することが出来ます。補償の範囲を広げ、損害査定プロセスの複雑さを排除し、流動性や迅速な支払いによってお客様に安心を与えることが出来るのです。

信頼できるデータ

パラメトリック型保険の発売から20年以上経過していますが、いまだに多くの人が比較的新しい保険だと思っています。イノベーションの発展は時に懸念を生じさせる場合があります。しかし、ホッツは「データ分析の進歩とモデリング技術の向上によってパラメトリック型商品への信頼度は高まり、今日では、以前なら「保険に適さない」と考えられていたリスクをモデリングすることが可能になった」と述べています。データの向上はまた、リスク評価の確実性の向上を意味します。これによって企業はより確かな事業継続計画を整備し、より多くの情報に基づいて保険加入の判断を下すことが出来るようになっています。

さらにホッツはこう述べています。

高品質のセンサーと機器という観点では、確実に新しい世界が広がっており、これにより年中無休で世界中をモニターすることが可能です。当社では、リスク移転のために、この新しい豊富なデータを活用しています。
マーチン・ホッツ, パラメトリック・ナチュラル・カタストロフィー・ヘッド, スイス・リー・コーポレート・ソリューションズ

今日の高解像度データがあれば、より地域に特化したソリューション構築が可能となり、事象発生時からのすべての直接的かつ間接的な悪影響を含む損失の代用データとなり得ます。現代はデータ主導型の時代となり、独立した信頼のおける第三者データを事象発生から僅か数日で入手可能であり、リスク移転の根拠として使用する機会は間違いなく増えています。」

「今年、当社は地震、熱帯低気圧、雹(ひょう)に対する保険金支払いを、報告を受けてから数日で完了しました。非常に迅速で、スムーズ、かつ簡単なプロセスのため、被保険者であるお客様はよい商品だとお考え頂いているようです。」

本記事は、2020年9月25日にStrategic Risk に掲載されたものです。