サプライチェーン・レジリエンスへの教訓

新型コロナウイルス感染症による危機は、サプライチェーンの脆弱性に注目が集まった最新の出来事です。その教訓は明確ではありますが、どれくらい早く人々の記憶から忘れ去られてしまうのでしょうか?Martin Schürzはこのように問いかけます。

グローバルなパンデミックはサプライチェーンのリスクを取り巻く問題として再び注目を集めており、中国でロックダウン(都市封鎖)が行われた初期の段階では、世界的な商品とサービスの流れに大規模な混乱がもたらされました。世界経済フォーラムが指摘したように、中国のロックダウンの影響および世界の工場としての評判には疑問が投げかけられました。

「中国の工場が閉鎖された際、サプライヤーの融通が利かず、製造業者は方針転換することに苦労することとなりました。重要なことの1つとして、グローバル企業が中国のみに依存するのではなく、将来的にサプライチェーンの多様化を図ることがあります。」

過去の混乱をもたらしたイベントの際に数多く目にしてきたように、他の生産ハブへのシフトやニアショアリング/リショアリングへの移行の可能性について種々の議論が見られる一方、記憶は短期間しか残らないもので、コストが常に重要な役割を果たしていることに変わりありません。 

グローバルサプライチェーンに内在する複雑性と脆弱性が今すぐに解消される可能性は低く、危機から導かれる最も優れた教訓として、より良い緊急時対応計画(危機管理計画)とシナリオ分析の必要性があります。これは、保険会社やリスクエンジニアリングが有益なサービスを提供することが可能な分野となります。

ベストプラクティスの分析・評価(ベンチマーキング)

私達の強みは、さまざまな業界とさまざまなサプライチェーンにおいてベストプラクティスがどのようなものであるかを見極めることにあります。過去150年間にわたり業界で培ってきた経験とデータがあります。これによって、お客様のリスク管理に対するアプローチについてベンチマーキングを行い、相対的な強みと弱みを分析し、一段と強靱なものとしていくためのアドバイスを提供することが可能となります。 

すべての企業・組織が、直接経費の節減とサプライチェーン・レジリエンスに対する投資とのバランスを取っていかなくてはなりません。バランスの取り方が悪いと、最終的に企業が立ち行かなくなる可能性がある危険な賭けとなってしまいます。
Martin Schürz, Head Risk Engineering Services, Swiss Re

企業・組織は、金融サービスや医薬品のような規制が厳しい業界から、自動車や電子機器などの業界にまで多岐にわたります。そのサプライチェーンは潜在的に極めて複雑かつ広範であるため、一次階層(Tier 1)を超えて管理することは難しく、その数が指数関数的に増加する三次階層(Tier 3)をマッピングすることは不可能に近いものがあります。私達は、どのような緊急時対応計画が機能するのか、そうした計画を維持していくことがいかに大切であるのかを理解しています。

2011年の東日本大震災を例にとってみましょう。震災の影響で、自動車のGPSシステムの部品サプライヤーは混乱に陥りました。このとき、自動車会社は、混乱を最小限に抑えるために、GPSを搭載せずに車を配送し、その後回収してGPSを取り付けることが可能であると判断しました。しかし、これがブレーキライトなど重要性の高い部品のサプライヤーであった場合には、簡単に生産を継続することはできなかったと考えられます。 

例えば通信サービス業界では、企業はホットスペアの容量を確保しています。ホットスペアはスタンバイ状態で維持されているため、万一施設の1つで問題が発生しても別の施設に切り替えることができるようになります。これらの機能は、理想的には定期的にテストされています。代替サプライヤーとの契約についても同様です。

リスクの集積を認識する

サプライチェーンが一段と複雑化する中で、潜在的な相互依存性は一層大きくなる可能性があります。例えば、大手自動車会社のうち、スイスの小さな企業が製造する環境センサーが3台に1台の車に搭載されていることを理解している会社はどれだけあるでしょうか?

また、2011年にタイで発生した洪水で、バンコク郊外の工業団地にリスクが集中していることが浮き彫りになったにも関わらず、他の潜在的なホットスポットに十分な注意が払われてきたでしょうか?

半導体業界の場合は台湾の新竹サイエンスパークや中国の長江デルタ地域が該当します。どちらも重大な自然災害が起こりやすい地域です。米国のエネルギー業界にとって、ハリケーンがヒューストン・シップ・チャネルを北上する見込みについては、慎重に検討する必要があるもう一つのシナリオと考えられています。

私達の仕事は、お客様が損害防止や事業継続マネジメントに対して投資することを望む潜在的な懸念事項の洗い出しをサポートし、お客様のレジリエンス(強靱性)を高めることにあります。

当社のリスクエンジニアリング(RES) は、最も大きな混乱が生じる可能性のあるシナリオやサプライチェーンを強化するために実施すべき準備についてお客様がより良く理解することを支援するように取り組んでいます。

本質的には、リスク評価を通じてお客様の実態を示し、サプライチェーンについての可視性を高め、レジリエンスに関する最良の教訓をあますところなくお伝えいたします。

初版はStrategic Riskにより2020年11月30日に発行

当社リスク・エンジニアリングについてはこちら をご参照ください。

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