サプライチェーン:アジアへのスポットライト

過去10年間においてアジア太平洋地域でサプライチェーンの混乱をもたらす要因は主に4つ見られました。 自然災害、人的災害、サイバー攻撃 およびパンデミック(感染症の拡大)です。

過去10年間に発生した主要なイベントからもたらされたサプライチェーンの混乱の特徴と大きさは、アジア太平洋地域におけるサプライチェーンの複雑性と相互依存性を反映しています。2011年に発生したタイの洪水や東日本大震災・津波から2015年の中国/天津港の爆発事故、さらに直近ではパンデミックや大規模なサイバー攻撃によって混乱がもたらされました。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズのRisk Engineering Services (RES) AsiaのマネージャーであるTze Way Yeongによると、「こうしたイベントは、ハイテク製品や部品などを含め製品の多様化をもたらす製造業の中心地として、アジア太平洋地域の重要性が高まっていることを浮き彫りにします。」

自動車、コンピュータおよび電子機器業界の企業は、2011年にタイや日本で発生した自然災害を受けて、そのエクスポージャーについて改めて気づかされることになりました」とYeongは説明します。「タイはハードディスクや自動車の主要な生産拠点で、タイで発生した洪水はこれらのサプライチェーンに大きな打撃を与えました。幾つかの自動車会社は、まさにタイで製造していた部品を調達または入手できなかったために、自社の生産を停止せざるを得ませんでした。」

「そして、東日本大震災も発生しました。これによって多くの人の命が失われたのみならず、電子部品から塗料に至るまで、主要な自動車メーカーの部品サプライヤーが混乱に陥りました」とYeongは続けます。「福島の原子力発電所も打撃を受け、これによって電力の使用が制限されました。これは、サプライチェーンだけでなく、日本の人々の日常生活にも極めて深刻な混乱を招きました。」

パンデミックによる混乱

最近では、新型コロナウイルスのパンデミック(感染症の拡大)によって、局地的なロックダウン(都市封鎖)の時期を中心に、サプライチェーンの大規模な寸断が引き起こされました。

「食料と飲料のセクターではタイムリーな供給の再開が問題でした」とYeongは語っています。

「穀物は畑で成長を続けていたにもかかわらず、人々は作業ができず、流通網は混乱を極めていました。港湾は荷物の積み下ろしができず、そうした地域では航空網も大きな打撃を受けていました。」

「さらに、2020年はオーストラリアでも立て続けに2件のサイバー攻撃が発生し、これによって大手流通会社や交通会社が被害を受け、配達の遅延や売上げの減少など大きな混乱が起きました。」

アジア地域の経済が成長し発展を遂げる中で、アジアのサプライチェーンの複雑性と、混乱によるその影響の受けやすさは高まってきました。

アジアは、ハイテク部品や電子部品の製造で主要なプレイヤーになっています。そのため、アジアの生産施設は数が増えているだけでなく、複雑性も増しているのです。
Tze Way Yeong, Manager Risk Engineering Services Asia, Swiss Re

とYeongは言います。

半導体業界がその良い例であるとYeongは考えています。「アジア太平洋地域(APAC)の半導体生産施設は最先端です。世界で最も生産性が高く、収益性に優れた生産施設の1つです。その生産規模は極めて巨大で、大きな市場シェアを獲得しています。これらの施設に影響を及ぼす事故が発生した場合は、世界的に大規模な供給不足に陥るでしょう。」

特定の産業が、台湾、韓国、日本、中国などアジアの国々に集中することで、その脆弱性は増しています。こうした地域は、台風、地震、洪水などの大規模な自然災害のリスクに晒されています。

当社のリスクエンジニアリングは、お客様のより強靱なサプライチェーン構築をサポートするように努める中で、お客様のサプライヤーの拠点を把握し、単一のサプライヤーや単一地域の施設からの製品や部品に過大に依存していないかを検討します。

全体像の把握

「お客様のサプライヤーの拠点をマッピングする際、一番の課題は全体像を把握することです」とYeongは説明しています。

「保険会社やその他第三者にとってそのプロセスを理解することは非常に複雑です。アジアでは専有情報保護に関する懸念から、多くの情報が共有されないということが障害となることがあります。」

お客様が自らのエクスポージャーをより良く理解する上でお役に立てるように、当社のリスクエンジニアリングは、サプライチェーンの強みを評価することから始めます。その中で、サプライヤーは単一の調達先なのか否か、生産施設の間にどのような相互依存性があるのか、サプライヤーは自然災害へのエクスポージャーが極めて高い地域に集中していないか、といった点を考慮します。

「すべての顧客への半導体供給が1つの地域でまかなわれており、その地域で大地震が発生した場合、大規模な混乱が生じることは確実でしょう」とYeongは語っています。

「また、生産ラインの冗長性や二重化など、お客様自身の生産施設のレジリエンス(強靱性)にも注目しています。お客様は生産拠点をさまざまな場所に設けているかもしれませんが、すべてのプロセスを冗長化・二重化できるとは限りません。」

また、失われた生産能力を補う機能とその影響を軽減するための確固たる事業継続計画を策定しているか否かについても確認します。そして最後に、プロセスの強靱性について確認します。すなわち、製造プロセスのリスク・プロファイルが適切に評価され、適切な防護措置が実施されているか、という部分です。」

この点において、当社のリスクエンジニアリングは、保険契約者や保険ブローカー・代理店などのステークホルダーと所見や評価結果などの共有に努めます。「サプライチェーンや生産施設のレジリエンス(強靱性・回復力)を高めるために、当社のリスクエンジニアリングは、改善提案などを提供するように取り組んでいます。」 

初版はStrategic Riskにより2020年11月30日に発行

当社リスク・エンジニアリングについてはこちらをご参照ください。

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