アジア太平洋地域の再生可能エネルギーの状況

アジア太平洋地域では、持続可能性に向けた取り組みの強化が見られ、カーボンニュートラルを表明する政府が増えています。日本、マレーシア、ニュージーランド、韓国などの国では、2050年をカーボンニュートラル達成目標に設定しています。最近日本は、2050年までに再生可能エネルギーの割合を現在の20%から50~60%と3倍にまで増やす他、2040年までに最大45GWの海上風力発電設備を整備し、再生可能エネルギーに大きく貢献するという、グリーン成長戦略を発表しました。

中国では、20209月に習近平国家主席が、世界最大のエネルギー消費国で温室効果ガス排出国を脱して、2060年までに「カーボンニュートラル」を達成することを表明しました。さらに、中国の再生可能エネルギー投資は現在、従来型エネルギー投資を上回っています。このような変化に伴い、今後の再生可能エネルギーの重要性がさらに高まっています。これにより、私達には将来何がもたらされるのでしょうか。また、どのような課題があるのでしょうか。

  • 行政政策の変更(政府および当局)

中国では従来、大型発電所を運営する業者が限られており、送電業界に集中していました。現在、市場には送電網に小規模発電所が多数接続されるようになっており、このネットワークのために、管理がさらに困難になっています。送電網の集中管理から分散管理へと変化しているため、再生可能エネルギーの配電管理はさらに困難になります。

再生可能エネルギーの供給量は時間によりばらつきがあります。例えば太陽光パネルに日光が当たる特定の時間、または風力タービンに風が当たる時間に電力が生産されるため、天候や季節に強く左右されます。そのため、ネットワークを安定して調整するには、蓄電装置の使用に関する特定の知識が必要になります。

生産された電力をピーク状態で送電するのが困難なため、深刻な問題に発展する可能性があります。例えば、新疆では数年前に、太陽光発電による発電量の10%以上(最大18%)が送電網に取り込まれていませんでした。中国西部で生産される電力は、中国の他の地域で消費されることがあるため、送電に関連する問題が解決されない限り、将来的に国の行政と投資家の課題となるでしょう。

  • 電源の移行

一部の国では、業界を代表するメーカーが従来の熱エネルギーや原子力エネルギーから再生可能エネルギーへと移行しているため、電源の移行が促進されています。例えば、日本の東京電力ホールディングス(株)傘下の東京電力リニューアブルパワー(株)は、2035年までに、海上風力発電および水力発電事業6~7ギガワット(GW)を開発すべく、約90〜190億米ドルを投資する計画です。さらに、2019年に日本政府が風力発電所開発を促進する法令を施行したため、海上風力発電市場の急成長が見込まれます

風力タービンなどの高度な技術機器が一般にプロトタイプ段階にあり、かつ生産規模が小さいことから、産業の観点から見ると、これは現実的に困難な課題をもたらしているといえます。一方、このような特殊機器のメーカーは、現在 風力タービン、マスト、ブレード、ソーラーパネル、発電機などの「大量」生産の需要に直面しています。ここでは、自動車業界が行ってきたコスト削減目標が課されることから、適応しなければならない大きな変化が必要となります。これは、重工業メーカーには困難な課題です。

  • 再生可能エネルギーの新たなエクスポージャー

再生可能エネルギープロジェクトは、風力タービンの台風被害や太陽光パネルの雹被害など、自然災害に曝されやすい傾向があります。ソーラーパネルは、一定レベルの雹には耐えられますが、大粒の雹が降ると、ソーラーパネル設備に被害が発生し、深刻な損傷を受ける可能性があります

「自然災害エクスポージャーが高い地域で事業を展開する(洋上風力発電)プロジェクトでは、再生可能エネルギーの発展に伴い必要となる保険キャパシティーの確保が困難になってくる懸念が大きくなっています。保険会社と再保険会社は、リスクの集積を管理しなければならないため、ある特定の地域限定で一定規模の災害エクスポージャーを引き受けるしかありません。」(2020年、スイス・リー)

再生可能エネルギー関連技術は比較的新しいため、人的ミスの要素にも対処する必要があります。人的ミスにより、ソーラーパネルのケーブル配線の間違い、ソーラーパネル用の防雹ガラスの誤取り付け、風力タービン設置時の手順の誤りなどが発生する可能性があります。さらに、再生可能エネルギーセクターの最先端技術は保険会社の経験を越えるため、事態をさらに困難にしています。したがって、主要な機器の潜在的エクスポージャーを分析・評価する能力を備えているエンジニアを確保することが不可欠です。

以上の他、業界で急速に進むイノベーションによる課題も増えています。そのため、この進化し続ける業界の主な関係者(メーカー、設置業者、認証機関、行政など)と定期的に情報交換できる専門家を確保することが重要です。保険の観点では、再生可能エネルギー業界での成功には、お客様が十分な情報に基づいて意思決定できるように、タイムリーで関連性の高い知識を獲得することが必要となります。

おわりに

持続可能性に向けた取り組みの一環として、カーボンニュートラルを目指す政府が増えているため、再生可能エネルギーがソリューションとして採用される機会が増えています。これに伴う需要の急増により、業界にさまざまな技術的課題が生じています。課題には、エネルギー貯蔵と輸送関連の要因、高度に専門化された機器の製造などがあります。また、再生可能エネルギープロジェクトは自然災害の影響を受けやすい傾向があるため、気候も考慮する必要があります。

上記のシナリオや課題があるにも関わらず、企業は持続可能性に向けた取り組みと再生可能エネルギーへの移行を開始しています。その際に考慮すべき重要な点は、この分野のスキルと知識を備えた専門家を確保することです。社内の能力評価時にギャップが見つかった場合、ギャップを埋めるだけではなく、客観的な意思決定に役立つアドバイスを提供できるパートナーを特定することが不可欠です。

お問い合わせ

Advancing towards a sustainable future