持続可能性シリーズ:グリーン・ルーフ

都市化の進行に伴い、建物にグリーン・ルーフ(屋上緑化)を導入する事例が増えてきています。グリーン・ルーフは、建物の所有者や居住者、一般の人々、その周辺環境に多くの利点をもたらします。その利点には、断熱性の向上、消費電力の削減、雨水の貯留、空気の浄化、多様な生物が生息する環境、外観の多様性などがあります。一方で、グリーン・ルーフの導入を検討する際には、複数のリスクを考慮する必要があります。

グリーン・ルーフは、一連の構成要素で設計および設置された特定の植栽で構成されており、これには、保湿材、排水システム、耐根層(ルートバリア)、保護層(断熱とその下の屋根表面の保護の2つの機能を持つ)など、が含まれます。

財物リスクの考慮事項

建物にグリーン・ルーフが設置されている、またはグリーン・ルーフ設置の提案がある場合、財物やビジネスにどのような影響があるかを考慮する必要があります。損害保険会社が建物全体のリスク・プロファイルを評価する際には、以下の特徴やポイントに着目しています。

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漏水による損傷の可能性

グリーン・ルーフには灌漑配管が敷設されていることがありますが、この配管は凍結しやすいという特徴があります。根の成長や温度変化によってメンブレン防水膜に漏れが生じると、その下にある屋根構造物が損傷・腐食することがあります。排水システムに、土や植物が詰まることもあります。このようなことは、特に建設段階でよく見られるリスクです。

チェックポイント:屋根の貫通部は最小限にする必要があります。防水膜の下に漏水検知システムを設置します。雨水と灌漑水いずれの流出にも対応できるように、雨どいや排水溝のサイズを調節し、点検箇所を設定して定期的に点検します。豪雨時に備え、土壌層の比重・厚さに対する屋根の勾配の影響ならびに土壌層のずれや滑りの可能性を検討する必要があります。

火災荷重:グリーン・ルーフとその支持要素(植栽や防水膜など)は、屋根に対して可燃物の量を付加することになり、火災やその他の火源による発火の危険性を高めることになります。グリーン・ルーフにレクリエーション活動スペースが含まれる設計の場合には、照明、電気設備、バーベキュー/グリル、喫煙などが発火源となる可能性があります。

チェックポイント:植栽の水分量を適切に保ち、枯れた植栽を定期的に除去するとともに、不燃性の防火帯の設計・配置に注意を払い、全体的な火災リスクを抑制します。消火栓、ホースリール、消火器などの手動消火設備を設置し、消防隊進入口を確保します。電気機器・設備、たばこ、その他の火源からの発火のリスクを特定し、注意深く管理することが必要です。

倒壊の可能性:グリーン・ルーフでは、造園、降水量、灌漑による土壌飽和、土壌の定期的な入れ替え、植栽の成長などに関連して積載荷重条件を設定します。

チェックポイント:コンクリート屋根とその他の種類(大スパン鉄骨屋根)の耐荷重を屋根のライフサイクル全体で検討する必要があります。一部の屋根は、経時的に変形しやすくなることがあり、本来正常に機能していた特定の構成要素に影響を与えることがあります。将来的な変更により、建物の全体構造に影響が出る可能性があるため、正式なレビューを受ける必要があります。一般に、コンクリート屋根は、積載荷重が増加するような変化に対して、他の種類の屋根よりも強靭な特性を持ちます。

自然災害による損害:グリーン・ルーフは、地震や強風などの自然災害の影響を受けやすい特徴があります。植栽だけでなく屋根全体が損害を受ける可能性があり、取り替えを必要とする場合もあります。

チェックポイント:保湿材/耐根層などのシステムは、構造物に適切に固定する必要があります(土壌層には支持能力はありません)。一般に、グリーン・ルーフは、台風被害を受けやすい沿岸部など、強風に晒されやすい地域では設置するべきではありません。

スイス損害保険会社のリスク・エンジニアリングは、グリーン・ルーフの環境面でのメリットを認識しています。一方で、損害の可能性を低減するため、設計、設置、保守のすべての側面において、慎重な検討が必要であると考えます。

本資料に関して詳細な情報が必要な場合には、スイス損害保険会社のリスクエンジニアまでお問い合わせください。

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