硝酸アンモニウムの保管方法

損害防止:硝酸アンモニウムの保管方法

多くの化学物質は、社会に役立つ商品の生産のために必要な原材料や添加物として欠かせないものとなっています。それらの製造、保管、輸送および使用は避けることができません。リスクマネジメントにおいて最も優先すべきことは、化学物質を正しく認識して理解するとともに、それらを適切な方法で科学的に管理することです。硝酸アンモニウムはそのような化学物質の1つであり、最近のベイルート港および天津港の爆発など、世界中で数多くの大規模な爆発事故を引き起こしています。

硝酸アンモニウムとは?

硝酸アンモニウムは、外観は塩に似た白い結晶性固体です。自然界でも生成されますが、アンモニアと硝酸を反応させることで大規模生産も行われ、主に肥料として使用されています。その他に、花火製造、除草剤、殺虫剤、さらにロケットエンジンの推進剤および爆薬としても使用されています。硝酸アンモニウムが犯罪行為の一部として使用された例もあります。

硝酸アンモニウムはなぜ大規模な事故を引き起こすのか?

純粋な硝酸アンモニウムは通常状態では安定な物質ですが、密閉状態で高温に曝露する、あるいは激しい衝撃を与えることにより、爆発する危険性があります。例えば、溶解した硝酸アンモニウムは配管内や機械の内部などに密閉される場合があり、ここに不純物が混入してしまうと爆発することがあります。通常、硝酸アンモニウムが熱もしくは不純物の混入により爆発感度が高い状態になると、起爆する可能性があります。

硝酸アンモニウムの長期保管によるリスクは、不純物の混入によって引き起こされます。硝酸アンモニウムは、さまざまな物質、特に燃料油などの有機物と激しく反応します。硝酸アンモニウムの熱分解温度は200℃程度ですが、不純物があるとこの温度が大幅に低くなります。

固形の硝酸アンモニウムベースの肥料は、その濃度によっては、同様の脅威となる可能性があります。これに該当するのは、硝酸アンモニウムを重量の60%以上含む混合物、または硫酸アンモニウムと混合する場合には硝酸アンモニウムを重量の40%以上含む混合物です。硝酸アンモニウムのみの場合には、これらの肥料に対する場合と同程度の安全対策が推奨されます。

硝酸アンモニウムの危険性は、製造元の企業にとっては周知のことですが、世界中で輸送および保管・貯蔵を行っている組織・企業にはそれほど知られているものではありません。

損害防止のための硝酸アンモニウムの適切な保管方法について

硝酸アンモニウムの危険性は、製造元の企業にとっては周知のことですが、世界中で輸送および貯蔵・保管を行っている組織・企業にはそれほど知られているものではありません。用途が幅広いため、世界各地の港、倉庫、およびその他の物流施設で見られます。硝酸アンモニウムの保管に伴う危険性に関する知識と理解が不足していると大事故につながりかねません。

硝酸アンモニウムの保管に対する主な対策について、不純物の混入、保管環境、および建築構造の3項目で整理しました。硝酸アンモニウムを保管する施設では、以下のことに注意する必要があります。

  • 不純物の混入 – 硝酸アンモニウムは、酸、塩化物、クロム酸塩、金属を含む可燃物やその他禁忌物質から隔離して保管する必要があります。一般的に、機械類からの排出物または潤滑油も含め、あらゆる物質の混入を避けるべきです。不純物の混入のリスクを減らすために、硝酸アンモニウムは山積みではなく密閉した容器に保管するのが理想的です。また、こうすることで、硝酸アンモニウムが長年の間に水分を吸収する可能性も低くなります。一方で、ベイルートの爆発で見られたように、袋による保管だけでは適切な管理対策とは言えません。
  • 保管環境 – 硝酸アンモニウムの保管容器は、可能な場合には屋外に、または十分に隔離されて適切な換気システムが設置されている場所で保管してください。
  • 建物構造 – 硝酸アンモニウムは、木造の建物では絶対に保管しないでください。また、すべての熱源、燃焼装置、火気使用作業(溶接など)から、十分に隔離して保管する必要があります。
  • 硝酸アンモニウムは、人の生活エリアや作業場所から十分に隔離して保管する必要があります。
  • 硝酸アンモニウムの保管管理者は、その出所について把握している必要があります。EUおよび英国においては、硝酸アンモニウムは公認の研究所が実施する危険性評価試験(Detonation Resistance Test (DRT))を受ける必要があります。2003年に英国DEFRA(環境・食料・農村地域省)によって施行された、硝酸アンモニウム(高窒素含有量)の安全性に関する規則では、硝酸アンモニウムを含む物質で窒素含有率が28%を超えるものについては、DRTに合格したという証明書がなければ、その輸入、製造、供給、貯蔵・保管が禁止されています。
  • 契約または規定によって定められた品質要件を満たしていない場合、硝酸アンモニウムをまとまった量で保管することはできません。通常、そのような硝酸アンモニウムは、製造業者によって回収されて再処理されるべきです。

硝酸アンモニウムの除去が最良のリスク低減策であることは明らかですが、この物質は数多くの用途で使用されている非常に価値ある化学薬品です。また、不純物の混入なく保管されている、可燃物がない場所で保管されている、または不燃建築物で保管されている場合には、爆発を伴うことはないとされています。それでも、保管する量を限定し、山積みではなく密閉容器への保管を選択することが、リスク軽減のための重要な戦略となります。

当社リスク・エンジニアリングについてはこちらをご参照ください。

お問い合わせ