
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とその被害想定
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今回の政府機関による被害想定の詳細
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震の概略と先月(2021年12月21日)内閣府の有識者検討会より公表された最新の科学的知見に基づくこの地震の被害想定を紹介します。
日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震とは
房総半島の東方沖から三陸海岸の東方沖を経て択捉島の東方沖までの日本海溝および千島海溝ならびにその周辺地域における主にプレート境界または海洋プレート内部で発生する大規模な地震を指します。政府機関による調査では、千島海溝では300~400年の間隔で起きる巨大地震が17世紀に発生し(過去約6000年間の津波堆積物の調査資料から推定)、前回から既に400年程度経過していることから、最大クラスの津波をもたらす巨大地震の発生が切迫している可能性が高いとしています。一方の日本海溝は、千島海溝の南、青森県の東方沖から千葉県の房総沖にかけての一帯を指します。この日本海溝では2011年に東日本大震災の巨大地震が発生しています。政府は、宮城県等の海岸域での過去3000年間の津波堆積物の調査資料から、東日本大震災と同程度の巨大な津波が、550~600年間隔で5回発生していたことがわかったとしています。
発生地震の特性
日本海溝・千島海溝周辺で発生する地震は、プレートの境界で発生する地震、プレート内で発生する地震に大別されます。この地域では、マグニチュード(M)7から(M)8を超える巨大地震や、地震の揺れに比べ大きな津波を発生させる“津波地震”と呼ばれる地震まで、多種多様な地震が発生しています。日本海溝と千島海溝は、陸側の北米プレートの下に海側の太平洋プレートが潜り込む境界にあるため、海側プレートに引きずられた陸側プレートがひずみに耐えられずに跳ね上がると大きな地震が発生します。2011年3月11日にはM9.0の東日本大震災が発生し、宮城県栗原市で震度7、宮城県・福島県・茨城県・栃木県で震度6強を観測したほか、東北地方から関東地方北部の太平洋側沿岸に巨大な津波が襲来し、甚大な被害が発生しています。
今回の政府機関による被害想定の詳細
今回の被害想定は、2020年4月に内閣府の有識者検討会(日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ)がこれまで9回の会合を開き行ってきた被害想定をまとめたものです。被害想定は、阪神・淡路大震災や東日本大震災の大規模地震による被害状況等を踏まえて検討してきた手法によって推計されたものが前提となっており、「日本海溝(三陸・日高沖)モデル」、「千島海溝(十勝・根室沖)モデル」の2つの領域に分けて行っています。想定の巨大地震は、最新の科学的知見に基づく最大クラスの地震であり、東日本大震災の教訓を踏まえ、「何としても命を守る」ことを目的として、防災対策を検討するために想定されています。内容は、巨大地震や津波などによる建物被害や死者数といった直接的な被害だけではなく、避難や生活様態、対策を講じた場合の被害の軽減効果などを異なる季節や時間帯の3つのパターン(「夏の昼」、「冬の夕方」、「冬の深夜」)での被害量の推計も含まれています。本記事では、被害が最も大きくなると推計された被害想定を紹介いたします。
被害想定の検討対象地域 (図1参照)
震度分布 (図2参照)
❏千島海溝モデル❏
千島海溝モデルは北海道の襟裳岬の東方沖を想定震源域として設定し、北海道厚岸町は震度7、えりも町は震度6強の揺れに襲われるとしています。震度6強の揺れとなるえりも町の津波は最大27.9mとなると推計されています。
❏日本海溝モデル❏
日本海溝モデルは岩手県沖から北海道日高地方の沖合を震源域として設定し、青森県と岩手県で震度6強の揺れに襲われ、えりも町では最大23メートルの津波を観測すると推計されています。
図2 千島海溝モデル
想定被害(最大)
保険で出来ること
内閣府は「今回の被害想定は、被害の様相や被害量を認識・共有し、効果的な対策を検討するための資料として作成したものであり、対策を講じれば、被害量は減じることができる」と指摘しています。最大クラスの地震は、発生頻度は極めて低いものの、仮に発生すれば、広域にわたり甚大な被害が発生します。
災害リスクへの経済的な備えに関しては、保険でカバーできます。東日本大震災後に被災地域の企業(対象被災地:岩手県、宮城県、福島県、青森県八戸市に本社を持つ企業)を対象とした内閣府作成の調査資料によると、企業の地震保険の加入率は全体の約3割にとどまっている状況でした。
スイス損害保険会社では、従来型の保険のほかに、観測震度に応じて保険金を支払うパラメトリック型保険や企業の従業員に対する災害見舞金制度の裏支えする約定履行費用保険、サプライチェーンの被災による損失もカバー可能な自然災害包括保険(Nat Cat Protect)など、さまざまな商品を用意しています。天災は避けることはできませんが、備えることで被害は減らすことができます。
一年のはじまりに、対策の検討をしてはいかがでしょうか。今回のニュースレターが、地震保険を検討する上でご参考になれば幸甚です。
さらに具体的に検討したい案件がございましたら、当社にお気軽にご連絡ください。
※今回の想定被害の詳細については、内閣府のサイト内にある下記リンクよりご確認ください。