パラメトリック型保険の約款を読み解く

本稿では、パラメトリック型保険の約款構成に関するグローバルな動向を概観するとともに、日本における弊社地震事業継続費用保険金(Earthquake Business Continuity Expense Insurance : 地震BCE保険)の独自性について整理します。

パラメトリック型保険は、予め合意された指標が、予め定めた閾値を超えた場合に、約定した金額を支払う保険です。この契約をデリバティブではなく「保険」として成立させるためには、原則として① 補償対象となる損失の定義、② 保険者が損失を確認する権利、③ 支払額の妥当性を契約締結前に検証することが重要な要素となります。

グローバル市場におけるパラメトリック型保険の約款構成は大きく以下の2類型に整理できます。どちらの類型の約款が採用されるかは、各国・地域の法制度および規制の枠組みによって異なります。

第一の類型は「Certified Loss Form」です。これは、APAC地域および米国における標準的な約款であり、被保険者は保険金請求時に、補償対象となる損失の見込み額が予め定めた支払水準を上回ることを証明または表明する必要があります。米国における一部の約款では、保険金支払い後に実際の損失額を確認する条項や、仮に支払保険金が実際の損失額より大きい場合(保険者による過払いの場合)には返還を求める条項が設けられる場合もあります。このCertified Loss Formに該当する約款の実務的な課題は、誰が、どのような方法で損失を証明(certify)するかという点が挙げられます。

第二の類型は「Valued Loss Form」です。これは、主にEMEA地域およびAPACの一部地域で採用されている約款です。この類型の約款では、保険金請求時に被保険者が補償対象となる損失の証明や認証を必要とせず、予め定める指標および支払額の妥当性は保険契約締結時に検証します。すなわち、保険者と被保険者は、保険契約締結前の段階で、その指標と支払額の関係性が、対象とする保険事故により想定される財務的影響に対して合理的であることに合意します。これにより、より迅速かつ簡潔な保険金支払いが可能となります。

日本の地震BCE保険は、上述した2類型の特徴を併せ持つ独自のハイブリッドなアプローチを取っています。地震BCE保険は、被保険者が保険金請求を行う際に保険金支払い額の証明や認証を必要としない点ではValued Loss Formに近い一方で、被保険者は物的損害や事業中断による喪失利益の見込額が予め定めた額を超えている事を証明する必要があります。この点で、Certified Loss Formとの類似性もあります。

今後の論点として、日本市場においてCertified Loss Formを採用する場合、従来型の損害査定との整合性をどのように確保するかが課題となります。特に、過度に詳細な査定プロセスを求めた場合、パラメトリック型保険の特長である即時性が損なわれる可能性があります。一方、Valued Loss Formや地震BCEにおいては、支払額の合理性をどのように説明し、記録として残すかが重要な論点となります。すなわち、パラメトリック・ソリューションの本質的価値である「迅速性」と「簡潔性」を維持しつつ、保険として求められる規律や説明可能性をいかに確保するかが、引き続き主要な課題となります。

スイス・リー・コーポレート・ソリューションズは、10年以上にわたり、パラメトリック型保険の分野をグローバルに牽引してきました。各国の法制度・規制環境を踏まえた商品設計、約款構成、トリガー設計、支払スキームの妥当性検証に関する豊富な知見を活かし、世界中の企業に対して実効性の高いリスク移転ソリューションを提供しています。日本市場においても、地震BCEにおける支払実績を積み重ねており、迅速性、透明性、そして保険としての健全性を兼ね備えたソリューションの発展に取り組んでいます。

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